栄養士に聞く!フルマラソンに向けた食生活改善のポイント【コツコツ体づくり】

ケア・ラントレ ランナーのための食事と栄養

大会でフルマラソンに挑戦することを決めたら、コツコツと準備したいものです。ケガなく楽しく走るためには、走る練習はもちろん、身体のコンディションを整えることも大切! そこで今回は、体づくりのために毎日の食生活で心がけるとよいポイントをご紹介します。教えてくださったのは、八王子スポーツ整形外科栄養管理部門スタッフの阿部菜奈子さんです。

まずは“3食しっかり食べる”こと!

──大会本番までじっくりと時間をかけて食生活を整える場合、まずはどんなことを心がければいいですか?

まずは、しっかり食べることが大切です。
最近の日本人は、食事量が少ないといわれています。厚生労働省の国民健康・栄養調査でも、摂取カロリーが足りていないという結果が出ているんです。「たくさん食べるのはよくない」と、必要以上に心配している人が多いように思います。あとは、朝ごはんを食べなかったり、忙しくてお昼ごはんが軽食になってしまったり、帰りが遅くなって夜ご飯を食べずに寝てしまったり……不規則な生活スタイルが広がっているのも要因のひとつかもしれません。フルマラソンを走るエネルギーを蓄えられる身体をつくるためにも、まずは3食きちんと食事をとる習慣をつけたいですね。

──3食のなかでも、朝ごはんをしっかり食べるのってなかなかハードルが高いです……。バタバタと慌ただしいのもありますが、起きてすぐだと食欲がわきません。そんな場合はどうすればよいでしょう?

朝ごはんをしっかり食べられないのは、睡眠の質が下がっているからかもしれません。そんなときは、夜ごはんの見直しをしてみましょう。朝昼をあまり食べずに夜だけ食べすぎていたり、寝る直前に食べてしまったりすると、消化に時間がかかって睡眠の質が下がってしまいます。そのため、量や時間に気をつけるようにしてください。寝る2時間前からはなるべく食べないことをおすすめします。夜ごはんを見直して、翌朝すっきり目覚められるようになれば、朝出かける前に走る時間も生まれるかもしれませんね。

主食・主菜・副菜の比率を1:1:2に!

──3食しっかりとれるようになってきたら、何に気をつければいいですか?

ごはんなどの主食と、お肉やお魚などの主菜、そしてお野菜などの副菜を、1:1:2の比率(グラム数を基準)で食べることを心がけてみてください。そうすることで、炭水化物とタンパク質、そしてビタミンやミネラルのバランスがとりやすくなります。とくに、現代の若い世代は野菜が足りていないとよくいわれますよね。代謝をよくしたり、入ってきたエネルギーをムダなくつかえるようにするためには、ビタミンやミネラルが不可欠。最初から主食の2倍の野菜をとるのは難しいかもしれませんが、徐々に慣らして1:1:2の比率を目指しましょう。

──無理なく1:1:2の食事をとるコツはありますか?

お野菜は、火が通ったもの、たとえば温野菜や和え物を組み合わせてとってもらうほうが、かさが減るので無理なくたべられると思います。それと、ごはんの量は気持ち少なめくらいにしておくとバランスがとりやすいはずです。ごはんを山盛りで食べようとすると、そのぶんものすごい量の野菜やおかずを食べることになってしまいます。きちんと全体のバランスを意識しましょう。あとは、「今日は野菜を200グラムとるのが大変だから、ごはんを玄米にしよう」など、微調整するのもOKです。

──ひとり暮らしで自炊をするのが大変な場合は、どうすればいいでしょう?

最近は、コンビニでパウチに入ったお惣菜がたくさん売られているので、そういったものを組み合わせるのがいいと思いますよ。お弁当を買ってしまうと、ごはんの量が多かったりしますよね。そんなときはパックごはんと、パウチのお惣菜と、サラダなどを組み合わせればバランスよく食べられるはずです。それと、生野菜を食べる場合はできるだけプチトマトなどカットされていないものも買ってもらえたらと思います。カット野菜は、切られて何度も洗われる過程でどうしても逃げてしまう栄養素があるので、そのまま売られているものがおすすめです。

練習内容によって食事も調整すると◎ 運動直後の栄養補給は30分以内に!

──たくさん練習した日は、食べるものも変えたほうがよかったりするのでしょうか?

長い距離を走る予定の週末などは、エネルギーを蓄えたいので、普段よりも糖質を多めにとれるといいですね。基本の1:1:2の比率から大きく変える必要はありませんが、野菜のなかでもイモ類など糖質が多めに含まれる野菜を増やすといいでしょう。また、筋トレをたくさんした日は、たまごをひとつ追加したり、納豆を1パックつけたり、タンパク源になる食べ物を1アイテムプラスするのがおすすめです。

──運動直後も、何か栄養を補給したほうがいいですか?

運動後の約30分間は、回復をアシストする成長ホルモンの分泌が盛んになっています。そのタイミングを逃さずにちょっとした栄養補給ができるといいですね。ポイントになるのは、糖質とタンパク質の同時摂取。運動直後の栄養補給では、糖質3に対してタンパク質1の比率が“黄金比率”といわれています。手っ取り早いのは、リカバリー用のサプリメントをとってしまうことですが、初心者の方にサプリは少し敷居が高いかもしれないので、100%オレンジジュースを200〜300ミリリットルくらい飲むのでもOK。おにぎりやサンドイッチなどの固形物だと消化している間に30分が過ぎてしまってもったいないので、ここではサプリやドリンクで補給するのがベターです。

大会直前は、少しずつ糖質多めへシフト

──それでは、大会が近づいてきたらどんなことを意識すればいいですか?

マラソン大会は寒い時期に開催されることも多いので、まずは直前に風邪などをひくことがないよう、身体をケアしたいですね。緑黄色野菜に含まれるカロテンには、喉や鼻の粘膜を強くする働きがあります。大会が近づいてきたら、意識的にカラフルな野菜を食べるようにしてみてください。あとは、カルシウムやマグネシウム……たとえば、海藻や小魚、胡麻などをとっておくと、足つりの予防にもなるかもしれません。おひたしやサラダに混ぜてしまえば無理なく摂取できますよ。

──大会前には「カーボローディングがいい」とよく耳にしますが、やったほうがいいのでしょうか?

「カーボローディング」とは、「グリコーゲン・ローディング」とも言って、エネルギーを身体に蓄えるために、糖質を多めに摂取することです。基本的には、大会の3日前ほどから徐々に糖質の摂取量を増やしていき、前日の夜や当日の朝は、ごはんや麺など糖質メインの食事をします。

──3日前から、どんなふうに糖質の摂取量を増やせばいいですか?

よく、カーボローディングというと、いきなり炭水化物だけ食べるようにしてしまう人もいるのですが、基本の1:1:2のバランスから大きく変える必要はありません。たとえば、先ほどお伝えした長距離走に向けた食事のように、イモ類を増やしたりするのが簡単だと思います。おかずを肉じゃがにしたり、煮物をつけたり、お味噌汁の具をじゃがいもにしたり……。食事全体の量は変えずに、いつものバランスから少しずつ糖質多めの比率にシフトできるといいでしょう。そして、前日の夜や当日の朝は、ごはんや麺などを中心に、しっかりエネルギー補給して大会に臨めるといいですね。

【初心者必見】フルマラソン大会前日&当日朝の食事ってどうすればいいの?

△右・阿部菜奈子さん。左・同じく八王子スポーツ整形外科栄養管理部門スタッフのお大島夕佳さん

3食しっかり、1:1:2のバランスで!

今回は、大会に向けてじっくりコツコツ体を整えるための食事のポイントについて教えてもらいました。まずは3食しっかりと食べることが大切なのですね。現代の忙しい暮らしのなかで、朝・昼・晩と、それぞれバランスを意識して食事することは、なかなか難しいと感じる人もいるかもしれません。それでも、活動に必要な栄養を摂取するうえで食事はとても大切なこと。必要に応じてコンビニのお惣菜を組み合わせるなど、続けやすい方法で実践してみてください。1:1:2の比率でバランスの取れた食事は、運動する・しないに関わらず、健康的な暮らしをサポートしてくれます。フルマラソンへの挑戦を機に食生活を見直して、すこやかな毎日を送れるようにしましょう!

まとめ

  • まずは3食しっかりとる。朝、食欲がわかない場合は、夜ごはんの見直しを。
  • 主食・主菜・副菜の比率を1:1:2に。
  • 練習内容によって食事も調整すると◎
  • 運動直後の栄養補給は、30分以内に。固形物よりもサプリやドリンクがベター。
  • 大会直前は少しずつ糖質を増やす。イモ類など糖質が多めに含まれる食材を取り入れると無理なく増やせる。

取材協力

八王子スポーツ整形外科
http://sports-medical.net/nutrition/staff/index.html

LAC-U
http://www.lac-u.com/

書籍紹介

決して太らない健康なカラダに!食の法則1:1:2レシピ マガジンハウスムック 「決して太らない健康なカラダに!食の法則1:1:2レシピ」

プロフィール

  • 阿部 菜奈子 (Office LAC-U所属。管理栄養士)

    東海大学陸上部短距離、全日本男子バレーボールチーム、専修大学アメフト部、フィギュア スケート村上佳菜子選手などの栄養サポートを担当。またジュニアアスリート、保護者、指導者に対するスポーツ栄養クリニック、アドバイス、講演活動を行う。

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