【テクノロジー図鑑vol.27】『Measee 近(筋)未来サポートシステム』─ 筋肉の状態を『見える化』した次世代の筋音筋電センサ測定器
長年愛され続ける有名プロダクトから、あっと驚く新製品まで─ランニングにまつわる気になるテクノロジーを紐解く、スポリートの“テクノロジー図鑑”。第27回目のテーマは、株式会社エヌ・シー・ピーの筋肉の状態を見える化した筋音筋電センサ『Measee』です。
今回のテクノロジー図鑑では株式会社エヌ・シー・ピーに、『Measee』についてお話を伺いました。
1970年創業の総合建設コンサルタント、株式会社ウエスコホールディングスを親会社に持ち、ウエスコホールディングスの事業のひとつであるスポーツ施設の運営を担当する株式会社エヌ・シー・ピー。12年前から広島市の介護予防プログラムの委託を受けて始めた、高齢者向けの健康教室「カラダすっきり体操教室」を通じて、最終的なプログラム効果の測定方法に違和感を感じたことをきっかけに『Measee』が開発されました。脳からの指令「筋電」と筋肉が反応した時に発せられる音「筋音」から、筋肉の状態を測定。スポーツやリハビリテーションなどさまざまな運動領域での活躍が期待されています。
正しい運動効果を、数値で「見える化」する。
──まずは、『Measee』の開発経緯を教えてください。
『Measee』は、私たちが広島市から運営委託を受けた予防介護プロジェクトがきっかけで生まれました。3ヶ月の予防介護トレーニングで、受講者の方に予防改善があったかを測定するまでをプロジェクトとし、歩行速度の速さの比較によってどれだけ効果があったのかを測定していました。しかし、3ヶ月後に数値として現れたのは、実施前よりも遅いタイムでした。
──予防介護を行なって、身体が不調になった…ということですか?
いえ、当然ですがそんなはずはありません。実際に、プログラムを受講してくださった方に話を聞くと、受講以前より動きやすくなった、楽に動けるようになったとの声が大多数でした。その原因は測定方法にあったのです。プログラムを受けて、姿勢が良くなり、関節の可動域が広がった受講者の方は、歩きやすい悠々とした姿勢になっていきました。受講前の前傾姿勢で小走りをしたタイムと、受講後の良い姿勢での測定タイムでは、測定値と効果が反比例してしまっていたのです。
──それではせっかくのプログラムも正当評価されないですね。
正当な評価はとにかく、受講者からは喜びの声が挙がるのに、行政の方からは本当に効果があるのか疑問視をされるのはプログラムの存続も含めて勿体ないと感じました。そこで、正しい効果測定の有効な手段を探していたところで見つけたのが、筋電筋音センサです。元々は、岡山大学医学部の岡教授が、片麻痺の患者のリハビリ時の脳からの指令を感知するセンサとして作られたものです。それを株式会社イーアールーディーが測定器として製品化したことを知り、この測定器でなにかできないかと話を聞きました。
──製品化された測定器はどのように活用されていたのですか。
イーアールーディーによれば、最初は自動車工場での活用などがされていたそうです。ひとつは工場のライン工の方に装置を付け、実際の業務の中で身体のどの部位に強い疲労が見られるのかを測定されていました。一方で、プロドライバーの方に装置をつけて、シートの位置が適切か、ハンドルの高さはどの位置が良いかなど、製品の品質向上にも活用されていました。Bluetoothでデータを送信できる利点もあり、研究施設には需要がありました。
ただ、その他の販売先として、特に健康産業に需要がないかを模索していたところ私たちが声をかけたということです。私たちもプログラムを通じた身体の好調を計るための目に見える数値での評価が必要と考えていたので、より使いやすい形としてタブレット操作ができるアプリを開発し、そこで『Measee』が生まれ、今日まで改良を繰り返してきました。
筋肉の見える化がもたらす、ランニングへの恩恵と未来への貢献
──『Measee』の具体的な使い方と、結果からわかることを教えてください。
使い方はとても簡単です。実際に測定したい箇所に、装置を貼るだけです。その状態で、アプリを起動させることで、即時に測定ができます。例えば、二の腕につけて、拳をぎゅっと握ります。そうすると、筋電を感知した後に、筋音を感知することができます。グーとパーを繰り返せば、連続する波形の中で、疲労を感じたタイミングが分かります。これを応用すると、例えば無意識に身体のどこかを庇っていたり、普段重いものを持つ腕が同じだったり、と意識の範囲外で習慣付いた行動による疲労の原因を数値で察知することができるのです。マラソンを例にすると、マラソンフォームの癖からくる疲労を察知し、それを改善することに活用できたり、日常的に測定をしている方であれば、マラソンをすると決めた日のコンディションが、良いタイムがでた日のものに近いのか、あまり調子が上がらなかった日のものに近いのか、そんなこともわかってしまうのです。これらの数値を活用することで、より質の高い練習が可能になるのではないかと考えています。また、表面的には見えないものが見えるということが意味するのは、意識ですらも測れることに繋がります。無意識で力をセーブしたポイントや、レース本番の気持ちの高揚による筋肉の動きの変化なども数値としてわかるということです。学生さんは、サボっているのがバレてしまいます(笑)
──活用の幅が広そうですね…。今度どのように活用したいなどの想いはありますか?
『Measee』は、研究やスポーツ、医療など多岐に渡り用途を生み出せる可能性を秘めていると思います。まずは、それらの方がより使いやすいように、デバイスの縮小化を図っています。多くの領域で使っていただけるように測定器をアップデートすることが直近での取り組みです。
また、大きな目標として、BMIなどの健康の指標として『Measee』を新たなインデックスにしていきたいです。一般的で確かな数値として、広く世間で認知されることで、エビデンスを増やし、有効なデータとしての活躍を期待したいと思っています。
──今までは感覚的に捉えられていた筋肉の数値が実際にわかるようになったことで、多くの産業が発展を遂げる可能性を感じ、ワクワクしました!あらゆるものが、『Measee』の数値をベースに、より負担の少ない、効果的な製品や手法を開発する未来がくるかもしれません。そんな未来に期待をしながら、まずは自分の身体に向き合いたい。そんな人にもおすすめの『Measee』をぜひ一度試してみては?
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