【テクノロジー図鑑vol.19】JVC『AE WIRELESSシリーズ HA-ET870BV』編─内蔵センサーでフォームをチェック!音響メーカーのプライドが詰まったランニングイヤホン

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長年愛され続ける有名プロダクトから、あっと驚く新製品まで─ランニングにまつわる気になるテクノロジーを紐解く、スポリートの“テクノロジー図鑑”。第19回目のテーマは、JVCのイヤホンAE (Athlete Evolved)WIRELESSシリーズより、フォームコーチング機能が搭載された『HA-ET870BV』です!

みなさんは、ランニング中に音楽を聴きますか? 聴く派の人は、どんなイヤホンを使っていますか?

ランニング用のイヤホンを選ぶ場合、「耳にきちんとフィットして外れにくいか」「コードが邪魔にならないか」「汗や雨に濡れても大丈夫か」「音質をキープしつつ、安全のために周囲の音も聞こえるようになっているか」などなど…考慮したいポイントがたくさんあって、「結局どれを買ったらいいんだろう」と迷ってしまうランナーもいるのではないでしょうか。

今回は、そんなランナーのみなさんにぴったりなランニング用イヤホンにフォーカスします。

JVCケンウッドのスポーツ向けイヤホン『AE(Athlete Evolved)』シリーズから登場した『HA-ET870BV』には、ランニングをサポートするフォームコーチング機能が搭載。なんと、イヤホンに搭載されたセンサーによって得られたデータと専用アプリとの連携で走りを解析し、音声によってリアルタイムでのコーチングを行ってくれる機能が備わっています。 そしてJVCといえば『ビクター』と『ケンウッド』が培った技術力を併せ持つ、音響機器のプロであり老舗。音質や装着感にもこだわりが詰まっていて、ランニング時以外でも使いやすいのが魅力です。 今回は、そんな『HA-ET870BV』へのこだわりを紐解くべく、開発チームにお話を伺ってきました!

頭の動きからフォームを解析してくれるコーチング機能

お話を聞かせてくださった開発チームのみなさん。(左から)主に形状や装着感の調整に携わった美和さん、製品化の取りまとめ全般を担当した大平さん、アプリの作り込みを担当した青木さん(以降、敬称略)

──まず、フォームコーチング機能について教えてください。

大平: イヤホンに内蔵されたモーションセンサー『BiomechEngine™』によって測定した頭部の動作情報を、専用アプリ『Runspect™』によって分析し、音声によってリアルタイムで「その調子です」「頭の位置が低すぎます」など音声コーチングをしてくれる機能です。測定したデータはスマートフォンアプリに記録されていくので、走り終えてからさらに詳しく自分のフォームについて振り返ることができます。

──たとえば、どんなデータをとることができるのでしょうか?

大平: 「ケガをしにくく、速く長く効率の良いフォームで走る」ための参考になるデータです。たとえば、頭の傾き、上下動、ステップ幅、ストライド、滞空時間や設置時間、ピッチ、衝撃、左右対称性、負荷…など、たくさんのデータや分析結果を残すことができるので、「ケガのリスクを最低限に、長くランニングを続けるアドバイスがほしい」「自分のフォームのデータをとことん記録してみたい」など、幅広いランナーの皆さんに活用していただけるような機能になっています。

※フォームコーチング機能にはBeflex Inc.開発のモーションセンサー及びアプリケーションを活用

──小さなイヤホンで、そんなにもたくさんのデータをとることができるのですね…!

大平: 従来のイヤホンと違って、センサー用のデータ信号線や電源線など、よりたくさんの線を通して手作業で接合する必要があったので、そのあたりはやや大変だったポイントでもあります。製造現場と一緒に工夫しながら、確実につけられる方法を模索していきました。

青木: スマートフォンアプリはもともと英語バージョンで作られたものを、我々が日本向けに対応させています。日本人の感性に合うように、インターフェイスや表示、それからテキストの表現など、細かいところの調整を重ねました。

たとえば、英語だと「Next」と表現されていても、それを日本人に向けた表現にするとなると「次へ」や「次のページ」なのか、それとも「同意」や「OK」といった言葉がいいのか…など、ニュアンスに敏感な日本人が理解しやすい表現になるよう、ひとつひとつ検討する必要があったんです。今後も、お客さまからの意見もいただきながら、必要に応じてアプリ側の微調整は続けられていく予定です。

──たくさんの測定データを活用してもらうためにも、アプリの使いやすさにもかなりこだわられているのですね。イヤホンの装着感などの面は、いかがですか?

美和: ランニング中は上下動が繰り返されて衝撃が加わるため、「きちんとフィットして外れにくいか」「当たって痛くなるところがないか」といった点に、より一層気を配って作り込んでいます。これまでのAEシリーズにも取り入れられてきた『ピボットモーションサポート』(耳のくぼみにしっかりとフィットして外れにくくするイヤーサポート)を進化させ、さらに装着感を高めてくれる構造になりました。

──フィット感や付け心地の良さを実現するために、どんなふうに工夫を重ねられたのですか?

美和: とにかく開発中からたくさんの人に試してもらいながら微調整を重ねていくという、地道な作業でした。図面上で「これならいけそう」と思っても、実際に人間がつけてみると合わなかったりすることがあります。また、ある人にとってはちょうどよくても、別の人には合わない、ということも。耳の形は千差万別なので、より多くの人にできるだけ高い点数で満足してもらうためには、とにかく実際に試してフィードバックを集めながら仕上げる必要があるんです。

機能などに惹かれてイヤホンを手にとっていただいても、使い続けてもらうためには装着感がとても大切。今回の『HA-ET870BV』も、実際につけて走ってみて「フィットして外れにくい」という付け心地の良さを実感していただけたらうれしいです。

長年培われてきた「こだわり」による、優れた音質

──ランニング中は、人や車の様子など周囲の音も聞こえていたほうが安心です。『HA-ET870BV』は、そのあたりにもきちんと考慮されていると聞きました。

美和: はい。安全に走っていただくためにも、「低遮音」のイヤーピースが付属しているので、これを装着してもらえば周囲の音が聞こえやすくなります。小さな穴と溝をつけることで耳の穴を密封しない構造にして、外の音が入ってくるようになっています。

大平: それでいて、やはりイヤホンとしてなるべく良い音で聴いていただきたいので、穴や溝の大きさや位置はかなり試行錯誤されてきました。

美和: 低遮音にするとどうしても音圧が下がって、低音が物足りなくなってしまうことがあります。それでもなるべく音のバランスを損なわないように、穴や溝の数や大きさが計算されているんです。また、「バスブーストモード」に切り替えると低域が持ち上がるので、低遮音イヤーピース使用時でもバランスの良い音を楽しめるようにするなど、機能面でも調整が行われています。

青木: 音の調整そのものは機能による電気的なもので、方法はそこまで複雑ではないのですが、ぴったりはまる音を実現するのはなかなか難しくて。

美和: そのあたりが、音響メーカーとしての腕の見せどころになるんです。

──音響メーカーの音へのこだわり、奥深いです。JVCケンウッドが「良しとする音」は、どのように判断されているんでしょうか?

美和: 音の好みは人によってさまざまありますが、当社は音響に関する長年の歴史を持っていることもあり、社内に「音決め」をする人がいます。JVCケンウッドが培ってきた音の雰囲気を受け継ぎつつ、お客さまに心地よいと感じてもらえる音を届けられるように、音決めの担当者は「もう少しこのあたりの音を調整したほうがいいのでは」などの意見を開発チームに伝え、質を高めていきます。今回の開発では別の者が担当しましたが、実は私も音決めをすることがあるんですよ。

──音のプロフェッショナル、すごい…。長年培われてきた歴史や技術と研ぎ澄まされた音への感覚によって「JVCケンウッドの音」が作られているのですね。

大平: 今回の『HA-ET870BV』は、フォームコーチング機能に注目していただくことが多いかと思いますが、音質や装着感はある意味当たり前のこととして高い質を目指しました。ランニング時以外にも純粋にイヤホンとして良い音を楽しんでいただけるようになっているので、ぜひ多くの方に手にとっていただけたらうれしいです。

──フォームコーチング機能搭載で、ランニング時に使いやすいフィット感や防水機能に低遮音。それでいて、音響機器メーカーとしてのプライドをかけて追求された高い音質も備わっている『HA-ET870BV』。たくさんのうれしいポイントが、すべて高いレベルで詰まっていることに驚きました。自分の走りを見直しながら元気にランニングを続けたい人にも、音にはちょっとこだわりのある人にも、きっと想像以上の機能性と使いやすさをもたらしてくれますよ。さまざまなレベルのランナーにおすすめです!

AE HA-ET870BVオフィシャルサイト

https://www3.jvckenwood.com/accessory/headphone/special/ae/et870bv.html

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