【スポリート栄養お悩み相談室】ランニング時のスタミナ切れ防止&疲労回復には「糖質」 ー グリコーゲンローディングレシピも

スポリート栄養お悩み相談室は、ランナーが抱えるよくあるお悩みに対し、栄養素を軸に対策方法や心がけるべきポイントをご紹介する企画です。今回取り上げるお悩みは「スタミナ切れ」と「疲労回復」。どちらも、カギになるのは「糖質」なのだとか…? 身近な食材で手軽にできる対策もたっぷりとご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
ランナーのお悩みその1「スタミナ切れ」
お悩みランナー : 長い距離を走っていると、突然ガクンと足が動かなくなってしまうことがあります。これってスタミナ切れですか…?
小笠原先生 : そうですね、スタミナ切れが起きていると考えられます。
運動中は体の中に蓄えられたエネルギーを消費していきますが、長い距離を走っていると使えるエネルギーがなくなり、足が動かない……ということが起こるのです。よく、フルマラソンでも「30kmの壁」なんて言いますよね。これも、まさしくスタミナ切れが原因の場合が多いです。
お悩みランナー : なるほど。「有酸素運動は脂肪をエネルギーとして消費してくれる」と聞いたことがあるのですが、こんなにお腹周りに脂肪があってもスタミナ切れになってしまうものなんでしょうか……。
小笠原先生 : 一般的に、いちばん脂肪がエネルギーとして使われやすくなるのが、「ちょっと息が上がるけれどしゃべれるくらい」の運動強度だと言われています。ですが、この場合も少しずつ「糖質」が使われていて、さらには息が上がったり、キツいと感じるようになってくると、脂肪よりも糖質中心に消費されるようになるのです。
お悩みランナー : ふむふむ。
小笠原先生 : なので、頑張って速いペースで走ったり、フルマラソンのように何時間も走っていると体内の糖質が足りなくなり、スタミナ切れが起きてしまいます。
お悩みランナー : なるほど。では、ダイエットで脂肪を燃焼させたい時は、むやみにキツい運動をすればいいわけじゃなくて、楽しく走れるくらいのペースがいいんですね。
小笠原先生 : そういうことになります。そして、大会や練習で長距離・長時間走る際は、適切に糖質を補給することでスタミナ切れを防げます。
お悩みランナー : 「糖質」は身体を動かすための大切なエネルギー源なんですね!
小笠原先生 : はい。それと、レースに備えてエネルギーをしっかりと身体に蓄える方法に「グリコーゲンローディング」というものがあります。(カーボローディングとも言われます。)
レースの3日前から3食の食事の内容の7〜8割を炭水化物にする方法で、筋肉中にエネルギー源となるグリコーゲン(糖質)を貯めることができ、90分以上の持久運動をする際にスタミナ切れが起きにくくなります。
グリコーゲン・ローディングとは
- 【スポリート辞典】グリコーゲン・ローディング|ぐりこーげん・ろーでぃんぐ | スポリートメディア
- 英語:Carbohydrate Loading|Glykogen Loading日本語:グリコーゲン・ローディング|カーボ・ローディング栄養摂取法の一つ。運動時のエネルギー分解が容易なグリコーゲン(糖原質)を、通常より多く体内に貯蔵するため、運動量や食事量を調節して行う。食事で炭水化物(カーボハイドレート)を多量に摂るためカーボ・ローディングとも言われる。一般的には、マラソンなどの持久運動でのパ...

お悩みランナー : そんな方法が! 炭水化物ばかり食べていいなんて……罪深くも甘美な響き。ラーメンに、白米に、餃子に……ふふふふふ。
小笠原先生 : ストップ! 「炭水化物中心の食事」と聞いて「やったー、いいの?」と言う人もいますが、グリコーゲンローディングでは基本的に脂っぽいものはNG。胃に負担がかかり、身体のパフォーマンスが落ちてしまっては本末転倒です。
お悩みランナー : そっか……。
小笠原先生 : 胃に負担がかかりにくい炭水化物を7〜8割、3日間3食たべ続けるのって、結構大変です。なので、「ごはん+麺類+お餅」だったり「サンドイッチ+スパゲティ」など、炭水化物をいくつか組み合わせるのがポイント。お腹が弱い人は、うどんや雑炊など、あたたかいものを中心にとるのがおすすめです。
今回は、グリコーゲンローディング中のお昼ごはんにぴったりのお弁当レシピも準備してきたので、ぜひ取り入れてみてください!

レシピは記事の最後にご紹介します!
レースでスタミナ切れを起こさないためのポイント
- 朝食をしっかりとる(糖質をとれるよう炭水化物中心に。スタートまでに消化吸収されるよう3、4時間前までに食べておく)
- 会場に向かう間もエネルギーゼリーやスポーツドリンク等でこまめに補給
- 初心者ランナーはレース中のエイドでできれば毎回補給を
- タイムを狙うランナーは、15kmと25kmで高糖質ジェルを補給するのがおすすめ
グリコーゲンローディングのポイント
- レース前の3日間、3食の内容を炭水化物7〜8割にする
- 「ごはん+麺類+お餅」「サンドイッチ+スパゲティ」などいくつかのメニューを組み合わせると食べやすい
- 人によっては身体が重くなったと感じる場合もあるので、初めて行う際は30km走などレース前の長距離練習時に試しておくのがおすすめ(身体に合わないと感じたら、無理に取り入れるのはやめておきましょう)
ランナーのお悩みその2「疲労回復」
お悩みランナー : この頃、走ると翌日に疲れを引きずりがちです。疲労回復力をアップする方法ってありませんか?
小笠原先生 : 疲労回復を早めるうえでも「糖質」が必要になってきます。運動によって筋肉から失われた糖質をしっかり補給することで回復がスムーズになり、疲れを持ち越しにくくなりますよ。
お悩みランナー : じゃあ、今度こそラーメンに白米に餃子に……
小笠原先生 : ストップ! と、言いたいところですが……餃子は結構アリです。疲労回復のために必要なのは「糖質」とお話しましたが、その糖質をうまくエネルギーに変えるためには豚肉に多く含まれる「ビタミンB1」を一緒にとることが大切。さらに、ニンニクやニラなど匂いの強い野菜に多く含まれる「アリシン」も合わせることで、ビタミンB1の働きがさらに強まるんです。
お悩みランナー : ほうほう。
小笠原先生 : つまり、餃子であれば皮で炭水化物、つまり糖質を。中の餡の材料である豚肉やニンニク、ニラからビタミンB1とアリシンをとれるので、結構理にかなってると言えます。ほかにも「スタミナ丼」「スタミナ炒め」など、豚肉にニンニク味をきかせた料理はその名のとおりスタミナ補給や体力回復にぴったりなんです。
お悩みランナー : おお……! スタミナ料理と呼ばれるものって、結構その通りだったんですね。
小笠原先生 : ちなみに、私はよく「練習後は牛丼屋さんで豚丼を食べてね〜」とおすすめしています。こちらもごはんと豚肉の組み合わせから「糖質」と「ビタミンB1」を手軽にたっぷりとれますよ。もし自炊できる場合は、豚肉のなかでもヒレ肉やもも肉、肩肉など脂質が少ない部位を選べるとより望ましいですね。

お悩みランナー : もし、運動後にガッツリ食べられない場合に、コンビニなどでサッと買えるおすすめの軽食などはありますか?
小笠原先生 : たとえば、おにぎりとビタミンゼリーだったり……ビタミンB1に関しては、サプリメントを活用してもOKです。あとは、運動後2時間以内に補食をとる場合は「糖質」と「タンパク質」を組み合わせることで筋肉のグリコーゲン量をより効果的に戻すことができるといわれているので、納豆巻きや鮭のおにぎり、またはおにぎり+ゆで卵などを食べるといいと思います。
お悩みランナー : 逆に、これは食べないほうがいいというものはありますか?
小笠原先生 : 内蔵に負担をかけるものはとらないようにしましょう。たとえば食物繊維の多い根菜や、脂っぽいものなどは、わざわざもりもり食べなくてもいいかな、という感じです。あとはやっぱりアルコールですね。ランナーの皆さんは、走ったあとのビールを楽しみにしている人も多いと思うんですけど……
お悩みランナー : ビール、飲まないほうがいいですか……?(悲壮感ただようまなざし)
小笠原先生 : ……お酒にも、糖質が入っています。でも、ビタミンB1はとれないので、せっかく糖質を身体にどんどん入れてもうまくエネルギーに変わらないことがあります。なので、お酒を飲みたければ練習後にきちんと水分補給をして、タンパク質&炭水化物&ビタミンB1をとってからにしたほうが、次の日ラクになると思いますよ。これを言うと、「乾いた身体にキンキンのビールを流し込むのがいいのに」ってよく言われるんですけどね……。
お悩みランナー : (今まさに言おうとしてた……)でも、てっきりダメって言われるかと覚悟していたので、ランニング後のお酒のダメージを減らすコツを教われてとても助かりました。
小笠原先生 : みなさんは楽しく運動するために走っていると思うので、あまりストイックになりすぎる必要はないんじゃないかな、と思います。突き詰めすぎると、おいしいごはんも、ただの「物質」としか捉えられなくなってしまうので……それではもったいないですよね。いかにおいしく、効果的に栄養をとるかが大切です。でも、もちろん身体に負担がかかるほどのドカ食いや偏食、お酒の飲みすぎは避けてくださいね!
疲労回復に効果的な食事のポイント
「糖質」「ビタミンB1」「アリシン」の組み合わせが◎
- ビタミンB1は豚肉に多く含まれる。ほかにも大豆やうなぎ、玄米などに含まれる
- アリシンはニンニク、ニラ、ネギなどに含まれる
- 運動後におすすめなのは「豚丼」や「スタミナ丼」「餃子」など
- コンビニで運動後の補食(軽食)を選ぶ際は炭水化物とタンパク質を組み合わせるのがおすすめ
- 内蔵に負担がかかるもの(食物繊維たっぷりの根菜や脂っこいもの、お酒など)は避けるのがベター
グリコーゲンローディングにぴったり! 高糖質お弁当レシピ
今回は「糖質」を軸に、「スタミナ切れ」「疲労回復」に関するお悩みをご紹介&小笠原先生に答えてもらいました。最後に、小笠原先生考案の高糖質お弁当レシピをご紹介します! 炭水化物とビタミンB1を効果的にとれるほか、ストレスや緊張で消費されやすいといわれるビタミンCも摂取できるように考えられたメニューです。お弁当なので、お仕事がある日もグリコーゲンローディングを続けられますよ。

内容
- 豚肉の“おにぎらず”
- ロールサンド(ハムチーズ・かぼちゃサラダの2種)
- さつまいものレモン煮
- ラタトゥイユ
- みかん
< 栄養価 >
エネルギー量:985kcal たんぱく質:25.9g 脂質:31g 炭水化物:143.6g
作り方は小笠原先生のブログでも紹介中。動画も公開されているので、ぜひ参考にしてみてください!
https://note.com/athletegarden/n/n5a194fd69e7f
レシピ(材料はすべて1人分)
■豚肉の“おにぎらず”

・ご飯…200g
・豚こま肉…50g
★醤油みりん料理酒…各小さじ1
・にんじん…20g
☆醤油 みりん 料理酒…各小さじ1/2
・ほうれん草…1束(20g)
・海苔…1枚
- テフロンフライパンに豚肉を入れ、中火で炒める。色が変わってきたら★の調味料を加えて弱火で3分程度炒め、火を止め、粗熱をとっておく。
- にんじんは皮をむいて千切りにし、テフロンプライパンで弱火で3分ほど炒める。
☆の調味料を入れ、3分ほど炒める。火を止め粗熱をとっておく。 - お湯を沸騰させて塩を少々入れ、ほうれん草を茎の方から入れて茹でる。茹でたらすぐに流水にさらし水分をしっかり切って、8㎝幅に切る。
- ラップを敷き、その上に海苔をのせる。海苔の真ん中にご飯半量を乗せ、さらにその上に①②③を乗せて、残りのご飯を上にのせる。海苔の四つ角を折り畳み、ラップで包んで、なじむまで置き、包丁で半分に切る。
■ロールサンド(ハムチーズ、かぼちゃサラダ)

◇ハムチーズ
・サンドイッチ用食パン…1枚
・ハム…1枚
・スライスチーズ…1枚
◇かぼちゃサラダ
・サンドイッチ用食パン…1枚
・かぼちゃ…30g
・マヨネーズ…小さじ1
・黒コショウ…少々
- かぼちゃを5センチ角に切り、沸騰したお湯で柔らかくなるまで茹でる。
水を切りボウルに入れて、温かいうちにスプーンなどで潰す。粗熱がとれたらマヨネーズと黒コショウを加え、なじませるように混ぜる。 - ラップの上に食パンを置き、①のカボチャを薄く伸ばしながら塗って端からくるくると巻いていく。
- ラップの上に食パンを置き、ハム、スライスチーズを乗せて端からくるくると巻いていく。
- ②③を斜めに切りそれぞれ二等分する。
■さつまいものレモン煮

・さつまいも…50g
・レモン…10g
・レモン汁…小さじ1/2
・水…大さじ1
・砂糖…小さじ1
- さつまいもは乱切りにする。レモンは汁を絞ってから薄くスライスする。
- 深めのフライパンにさつまいも、レモン汁、レモンのスライス、水、砂糖を入れ蓋をし、弱火で10分ほど煮たら火を止めて置く(冷めていく間に味がしみ込みます)
■ラタトゥイユ

・ブロッコリー…20g
・玉ねぎ…10g
・ナス…20g
・トマト缶…30g
・ケチャップ…大さじ1
・水…大さじ2
・塩コショウ…少々
・コンソメ…少々
・オリーブオイル…少々
・刻みにんにく…少々
- ブロッコリーを一口大の大きさになるように花の部分を切っていく
- 玉ねぎは2センチ角に切る
- ナスは乱切りにする
- 鍋にオリーブオイルとにんにくを入れ弱火にかける。にんにくの周りがシュワシュワと泡立ち香りが出てきたら、①②③の野菜を加え、油が全体に回るよう混ぜる。
- トマト缶、コンソメ、塩コショウを入れ、軽く混ぜたら蓋をして弱火で5分ほど煮込む
- 完成したら粗熱を冷ます