【テクノロジー図鑑vol.9】サロモン『バイブテクノロジー』&『ジオメトリック デカプリング』編─足が持つ本来の力を最大限に活かす



長年愛され続ける有名プロダクトから、あっと驚く新製品まで─ランニングにまつわる気になるテクノロジーを紐解く、スポリートの“テクノロジー図鑑”。第9回目のテーマは、サロモンのシューズに搭載されている『バイブテクノロジー』&『ジオメトリック デカプリング』です!

今回は、サロモンのロードランニングシューズに搭載されている『バイブテクノロジー』(振動吸収)と『ジオメトリック デカプリング』(非干渉設計)についてアメアスポーツジャパン株式会社にうかがってお話を聞いてきました。
スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツやトレイルランニングなど、さまざまなアウトドアスポーツのシューズやウェアを作り続けてきたサロモン。今回フォーカスする2つのテクノロジーにも、幅広いスポーツギア開発によって積み上げられた確かな技術力が活用されているのだとか。
人が持つ本来の力を最大限に活かしながら、心身のストレスから開放してくれる──シューズと裸足のいいとこどりを実現してくれるようなテクノロジーです。

ケガのリスクを高めるのは「微振動」だった

──まずは、バイブテクノロジー誕生の背景を教えてください。

アスファルトなどの固い路面を走ると、着地の衝撃から繰り返し足に細かい振動が生じます。それが何度も繰り返されることによって、関節や腱、筋肉などに影響を与え、ケガにつながってしまうということがわかったんです。そこで、サロモンでは足に生じる「微振動」に着目して、足の違和感に悩まされている人たちの手助けをできるようなシューズを作ろうということになりました。

──バイブテクノロジーのカギになっているのはどんなものなのでしょう?

「オパール」という素材がカギになっています。オパールは、サロモンで開発された振動吸収素材です。小さな粒状にしたポリプロピレンをお寿司のように固めると、振動の減衰が非常に早くなります。音で例えるとノイズをカットするような感覚ですね。こちらのオパールをソールに組み込むことで、振動吸収力を発揮させています。

──バイブテクノロジーを完成させるまでに苦労されたことはありますか?

オパールをソールに“組み込む”ことでしょうか。ソールに何か機能を持たせたいときは、ソールの素材──たとえばEVAに別の素材を練り込んで作ることが業界的にも多いんです。でも、今回の場合は練り込むことができない素材だったため、“組み込む”という形になりました。穴を開けるために新しいソールの金型が必要になったり、組み込む工程が増えたり、さまざまな苦労があったと聞いています。

──その苦労を乗り越えられた秘訣などはあるのでしょうか?

サロモンが、幅広くスポーツギアを作ってきたブランドだったから実現できた、というのはあると思います。サロモンはフランス発祥のブランドで、スキーやスノーボード、クロスカントリー用のブーツやビンディング、トレイルランニングなど、さまざまなスポーツのフットウェアを作り続けてきました。また、グループ内にはウィルソンやアークテリクスなどのブランドもあって、テニスシューズや、アウトドアシューズも同じラボで開発されています。そのため、木、金属、樹脂、カーボン、布…など、さまざまな材料を扱ってきた歴史があるんです。ほかのスポーツギアの技術をランニングに持ってきたり、異なる素材を組み合わせたり…幅広くて高い技術力が、ランニングシューズの開発にもかなり活かされています。

足本来の力を最大限に活かす「非干渉設計」

──ジオメトリック デカプリングはどんなテクノロジーなのでしょうか?

ジオメトリック デカプリングとは、ひとことで言うと“非干渉設計”のことです。人間の足は非常に複雑な形をしていて、そもそも奇跡的といっていいほどの素晴らしい性能を持っているんです。だからこそ、何かを付け加えたりすることによって、結果的に足そのものが持つ機能を邪魔してしまうと、ケガのリスクが高まる恐れがある、というのがサロモンの考え。
「ベアフットシューズ」「ナチュラルランニングシューズ」など、聞いたことがあるランナーの方もいると思いますが、それと似た考えでもあります。

──でも、いきなり裸足で走ったりすると、かえって危険だとよく聞きます。

そうなんです。実際には、足本来の機能だけでいいとはわかっていても、いきなり裸足で走ると、衝撃による微振動が重なってケガをしてしまうことがあります。そこで我々は、バイブテクノロジーと組み合わせることで、しっかりとランニングシューズとしてサポートしながらも、足の動きを最大限邪魔しないように工夫しました。

──どうやって「邪魔しない」ようにしているんですか?

ソールのスリットの向きや深さを細かく計算して、足の動きを損なわないようにしています。走るとき、私たちの足はスクリューのように3D方向へ複雑な動きをしています。
我々は、「プロネーション」も決して悪いことではないと考えているんです。その人本来の足の動きを邪魔しなければ、たとえプロネーションしていてもケガにつながる危険性は低いと考えられています。実際に、プロネーションとケガには関連性がないといったデータも出ているんですよ。業界的には「プロネーションをいかに抑えるか」に着目することも多いかと思うのですが、サロモンでは足の動きを阻害するものを取り除いて、本来の力を最大限活かす──それだけでも充分性能が高いという考えのもと、シューズを開発しています。

──スリットの部分に番号が書いてあるのはどうしてですか?

1、2、3の溝の入れ方を変えることで、3種類のタイプのシューズになっています。1の溝が軸になっているのは「PRO」モデルと呼んでいて、どちらかというとフォアフットで走る人に向けたものです。フォアフットだと、前足部の外側をついてすぐにつま先へとトランジットするといった足の動きに合わせた設計になっています。
2は「RA」モデル。ミッドフットで走る方に向けたものです。3は「MAX」モデルで、こちらはヒールストライク気味の方に向けたもの。これらは、その人なりのスピードや走り方によってチョイスできるようにしました。

──どれを選んだらいいのか、目安のレベルというか、タイムの基準などはあるんですか?

サロモンでは、「このシューズはサブ◯のランナー用」といった基準はとくに設けていないんです。そのため、タイムを軸に考えるというよりは、自分が「どんなふうに走りたいのか」を大切にしてもらいたいと考えています。とはいってもどれを選べばいいのかわからない人もいますよね。そこで一応3つのタイプに例えると、これからランニングを始めようという人は、「RA」。フォアフットが得意な人や、より速く走りたいといった目的意識を持つ人は「PRO」、長い距離を淡々と走りたい人は「MAX」というイメージですかね。

──これまでお話を聞いて、足が持つ本来の力を活かすことと、レベルやタイムにとらわれずに楽しく走ることを大切にされているのだと伝わってきました。

我々は、足本来の機能を最大限活かしながら、疲労やケガのリスクを軽減することを目指しています。これは、すべて「より楽しく、遠くまで」走れるようになってもらいたいから。だからこそ、履いてすぐに違いがわかる機能ではなくて悩ましい部分もあるのですが…プロスポーツ選手にも、サロモンのランニングシューズをトレーニング用にリピートしてくれている人が何人もいます。たとえばフルマラソンを走った翌日などには、「これまでとぜんぜん違う」と感じていただけるのではないでしょうか。きっと、じわじわと良さを感じられるはずなので、ぜひ一度履いてみていただきたいですね。

──ウィンタースポーツなど、ほかのスポーツのプロダクトも幅広く開発してきたからこそ、高い技術力と柔軟な考えのもと優れたテクノロジーが生まれているのだと感じました。足本来の力を活かして、健康に楽しくランニングを続ける。タイムを追い求めるのも良いけれど、ただただ走ることを楽しむというのも素敵なことですよね。純粋に、自由に身体を動かすことの喜びを感じられそうです。ありがとうございました!

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