【テクノロジー図鑑vol.4】ニューバランス『NB HANZO』編─日本人の足型から生まれたレーシングシューズ



長年愛され続ける有名プロダクトから、あっと驚く新製品まで─ランニングにまつわる気になるテクノロジーを紐解く、スポリートの“テクノロジー図鑑”。第4回目のテーマは、『NB HANZO』です!

NB HANZOは、2016年12月にニューバランスから誕生したレーシングシューズ。コンセプトは“勝利を掴むシューズ”で、トップレベルのランナーのスピードにも対応し、走りをサポートする軽さと反発性を備えています。
今回は、HANZOシリーズのトップモデルでもある「NB HANZO S」に搭載されたテクノロジーについて、そしてHANZOシリーズが誕生したときのエピソードについてお話を聞きました!

日本とアメリカの共同開発で生まれた

──HANZOシリーズはどんなきっかけで開発が始まったのですか?

ニューバランスには「ベストランニングブランドになろう」というひとつの目標があります。そのためには、ライフスタイルの一部として日常的に走っているランナーから、オリンピックでメダルを狙うようなトップアスリートまで、ありとあらゆる階層のランナーに愛されるブランドになる必要があります。そこで日本のマーケットでは、ボトムアップ戦略として、初心者ランナーに向けたアプローチに力を入れてきました。結果的に幅広いレベルのランナーに履いてもらえるブランドになったと感じています。一方で、サブ4以上のレベルになると、あまりニューバランスが履かれていないという事実も徐々に浮かび上がってくるようになりました。湘南国際マラソンなど、ニューバランスがサポートしている大会でシューズの使用率を地道に調査した結果、2〜3時間台のランナーにはニューバランスのシューズを履いている人が少ないことがわかったのです。
そこで、シリアスランナーにももっとニューバランスの靴を履いてもらえるようになろうということで、レーシングシューズの開発を始めることになりました。

──“HANZO”というテーマはいつごろ、どのように決まったのですか?

もともと、アメリカのボストンチームで開発された競技用スパイクシューズのコンセプトに“SILENT HUNTER(サイレントハンター)”というものがあったんです。これは、「黙々と練習を重ねた人が、最後は大物を狩る」というテーマを表現した言葉。ボストンの街でも飛んでいるのをよく見かける“はやぶさ”がアイコンになっています。

これを、日本版として落とし込めればと考えて、「日本のサイレントハンターといえば何かな」とディスカッションを重ねました。それで挙がったのが“忍者”。気配を消して、最後は大きな仕事をするということで、“SILENT HUNTER”にも通ずるものがあります。また、中足部から前足部で着地する日本人ランナーの走り方も、忍者のイメージに合っていますよね。それから“忍”“ニンジャ”“シャドウ”などいろいろな候補を出して、最終的に“HANZO”に決まりました。発音のしやすさなど、いろいろな要因が後押しになりました。

──ニューバランスはアメリカのボストンが発祥のブランドですが、NB HANZOは日本で発案されたものなのでしょうか?

はい、そうです。ニューバランスジャパンで企画され、アメリカとの共同開発で生まれました。ニューバランスはボストンに本社がありますが、日本にも開発者やデザイナーがいるという、外資系のスポーツメーカーのなかでもユニークな体制なんです。そのため、私が旗振り役で企画を進めながら、データ測定などはアメリカのチームにやってもらいました。

──開発にはどれくらいの時間がかかったのですか?

通常、フットウェアは企画を始めてから店頭に並ぶまで2年間ほどですが、NB HANZOに関しては3年半かかりました。時間がかかった理由には、日本人ランナーの足型や走り方の特徴を1から調べて直したり、新たな機能・素材の開発も並行して取り組んだからという点があります。

──日本人ランナーのデータをとってみて、これまでアメリカを中心に集められてきたデータと違った特徴などはありましたか?

「日本人は足の幅が広い」と言われているのを聞いたことがある人も多いと思うのですが、実際に測定してみると、幅が広いですね。一方で、かかとの部分は欧米人とそんなに差がありません。足の指に関しては、欧米人は人差し指が長く頂点になる人が多いのですが、日本人は親指が頂点になっている人が多いですね。これらの特徴はどちらが良い、悪いではなく、単純に骨格の違いです。
走り方にも少し特徴があって、欧米のランナーはストライドが長く、かかとから着地するランナーが多いのですが、日本人は中足部から前足部で着地するランナーが多い。そういった日本人の特徴も、NB HANZOのソールの作りに反映させています。

高いグリップ力と反発性

──NB HANZOのために新しく開発された機能はどんなものなのですか?

アウトソールに使われている「DYNARIDE(ダイナライド)」という新素材は、下敷きのようなプラスチックのベースに、エッジがかかった形状の特殊なラバーを貼り付けています。ラバーを使うことで、従来使われることが多かったポリウレタン素材よりも、さらに高いグリップ力や耐久性を実現しました。手裏剣のように尖った形状も、しっかりとアスファルトに引っかかるようにするためのもの。土台になっているプラスチックからも、曲げたあとの跳ね返りによって反発を得られるようになっています。

DYNARIDEは日本の材料メーカーさんとの共同制作で生まれました。プラスチックのスペシャリストと、ラバーのスペシャリスト、それぞれの会社に協力してもらい、合同で開発したものです。本来、プラスチックとラバーはあまり相性がよくなく、くっつかせることが難しいのですが、それでも工夫を重ねて、新しいアウトソールを生み出すことができました。このように、日本の材料メーカーさんと共同で開発を行えるというのも、ニューバランスが長年日本でも開発をしてきたという歴史があってこそなのです。

──ミッドソールにはどんな工夫がされていますか?

日本人は中足部から前足部にかけてテンションがかかるということだったので、そこに反発弾性を持たせるために、ニューバランスで最も反発する素材「RAPID REBOUND(ラピッドリバウンド)」と最も軽い素材「REV LITE(レブライト)」を組み合わせた構造にしています。この2つの素材を組み合わせるのは、初めての試みでした。反発弾性を高めるには、RAPID REBOUNDをできるだけ多く使いたいのですが、やや重い素材なので、使いすぎるとシューズ自体が重くなってしまいます。そこで、反発弾性をしっかり発揮できるけれど、重たく感じないギリギリのバランスを模索しながら、組み合わせの比率を決めていきました。

──完成したときにはどんな気持ちでしたか?

できあがったときは、この世になかったものができたなという喜びがありました。外資系メーカーと日本メーカーの合いの子的な立ち位置のニューバランスジャパンだからこそ、実現できたものだと思います。実際に多くのランナーの方からも満足いただいているという声をもらっていて、開発してよかったと心から感じています。

──HANZOシリーズには、「NB HANZO S」「NB HANZO R」「NB HANZO T」「NB HANZO C」「NB HANZO U」といったさまざまなモデルがありますが、それぞれどのように違うのでしょうか?

「S」はフルマラソンのタイム軸でいうとサブ2.5目標くらいで、一部トラックレースで履いている選手もいます。いわゆるエリートランナー向けのモデルです。
「R」は「S」のクッション性を高めたモデルで、サブ3目標くらいのシリアスランナーを想定しています。
「T」は、アウトソールにはダイナライドは使わず、軽さとグリップ力、そして耐久性を高めた素材を使っており、ミッドソールにも厚みをもたせています。そのため、トレーニング用シューズとして毎日履いてもらっても長持ちするといった良さがあります。
「C」は、サブ4レベルを目安にしていて、厚みとサポート力をより高め、クッション性と軽さを両立させることを目指しました。
もうひとつ、新しく発売した「U」は、初めてフルマラソン完走を目指す人や、ウルトラマラソンなど長距離を走る人がターゲット。20年以上にわたって日本人向けの長距離マラソンシューズとして支持されてきた「1040」の後継モデルとして、より機能性を高めました。

このように、タイム軸で見るとそれぞれターゲットも機能も異なりますが、「勝利を目指している人」をターゲットにしているという点はHANZOシリーズで共通していることです。表彰台だったり、自己記録更新だったり、完走だったり、それぞれの“勝利”を掴みたいというランナー──つまり、SILENT HUNTERという大きなコンセプトのもと、それぞれのランナーに合わせたシューズを開発しています。
今後は、さらにいろいろなランナーに合うシューズを提供していくために、シューズ職人の三村仁司さんの「M.Lab(ミムラボ)」ともコラボレーションしていきたいと考えています。三村さんがトップアスリートとのつながりで得てきた技術を、もっと多くのランナーにも実感してもらえるようになれば、日本のクラフトマンシップのものづくりのよさをさらに提供できると思っています。

──日本とアメリカ、どちらにも開発の場があるからこそ実現できたHANZOシリーズ。幅広いレベルのランナーを大切にするニューバランスの考えはそのままに、さらにトップレベルのランナーに向けたシューズを生み出すことで、ランナーたちの選択肢が広がりました。これからも、ありとあらゆるランナーに向けたレーシングシューズが生まれることを楽しみにしています!

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