【テクノロジー図鑑vol.3】ブルックス『BROOKS DNA』『DNA AMP』『DNA LOFT』編─アメリカシェアNo.1のブランドが提供するソールテクノロジー
長年愛され続ける有名プロダクトから、あっと驚く新製品まで─ランニングにまつわる気になるテクノロジーを紐解く、スポリートの“テクノロジー図鑑”。第3回目のテーマは、BROOKSから誕生した『BROOKS DNA』『DNA AMP』『DNA LOFT』の3つのソールです!
100年以上の歴史を持つランニングギア専門ブランドのBROOKS(ブルックス)。アメリカのランニング専門店市場でシェアNo.1を誇るなど、“アメリカで一番履かれているシューズブランド”として、多くのランナーから人気を集めています。そんなBROOKSは、ソールへのこだわりや探究心とともに成長してきたブランド。今ではランニングシューズのソールにとって当たり前の素材となった“EVA”を初めて採用したのもBROOKSなのです。 そこで今回は、BROOKSから生まれた3つのソールをご紹介します。2010年に誕生し、BROOKSのソールの代名詞として愛されてきた『BROOKS DNA』と、新たに誕生した『DNA AMP』『DNA LOFT』についてお話を聞いてきました。
オーダーメイドのようにカスタマイズされたクッション
──『BROOKS DNA』とはどんなソールなのでしょうか?
簡単にいえば、体型や走るスピードが違っても、それぞれのランナーにとって最適なクッション力を発揮してくれるソールです。 足のサイズが同じだったとしても、体重が軽い人には硬く感じたり、身体が大きい人には柔らかく感じたり…それぞれ、シューズの履き心地は違ってきます。また、スピードの違いによってもクッション性の感じ方は変わってくるのです。そこで、「すべてのランナーにとってベストなクッション材を」ということでつくられたのがBROOKS DNAです。与えられる衝撃の強さによってクッション性が変化するのが特徴で、オーダーメイドのようにカスタマイズされたクッション力を提供します。
お話を聞かせてくれたのは、日本でBROOKSの製品を輸入販売やプロモーションを行うカスタムプロデュース株式会社の倉茂麻理子さん。
──どんな仕組みで、さまざまなランナーにフィットするクッション力を実現しているのですか?
もともとはこのような素材をかかとや前足部に入れることで、衝撃を緩和させていました。
むにゅっとした触り心地。この素材がBROOKS DNAのクッション性のカギになっている。
その後改良を進めるうちに、DNAを形で成型するのではなくEVAミッドソールに練り込むことで、軽量化を実現。足裏全体で反発と衝撃吸収を調整してくれるものにもなりました。 BROOKSは、今ではランニングソールの定番素材となっている“EVA”を初めて使ったブランドです。ずっとソールにこだわりを持ってシューズをつくり続けてきたからこそ、ランナーにとってベストなシューズを提案したいという想いのもと誕生しました。BROOKS DNAが誕生した翌年には、BROOKSがアメリカのランニング専門店でのシェア率No.1を獲得。“DNA”という名前のとおり、その後BROOKSのシューズのベースにもなっていて、ひとつのターニングポイントになったテクノロジーだと思います。
“BROOKS史上最高の高反発ソール”と“BROOKS史上最高に軽く、柔らかく、へたらないソール”
──新しく誕生した『DNA AMP』と『DNA LOFT』はどんなソールなのでしょう?
DNAソールに加えて、さらに“反発力が高いソール”と“耐久性が高いクッションソール”を開発したいということで生まれたのが、『DNA AMP』と『DNA LOFT』です。
──それぞれの特徴を教えてください。
『DNA AMP』は、“BROOKS史上最高の高反発ソール”。ポリウレタンからつくられたソールを、“熱可塑性ポリウレタン”で形成された枠に流し込むことでできています。
シルバーの部分が熱可塑性ポリウレタン。
ソールの中心部に比べてやや硬い熱可塑性ポリウレタンで覆うことで、横に逃げてしまう力を抑えてくれます。それによって、しっかりと前に進むための反発を得ることができ、弾むように走れるのです。さらに、従来劣化が早いとされていたポリウレタンソールの変色なども防ぐことができます。
『DNA LOFT』は、“BROOKS史上最高に軽く、柔らかく、へたらないソール”。従来のシューズは、長く履いているとクッション内の気泡がつぶれて、ソールにシワが寄るように劣化していきます。よく、「かかとがすり減ってきたらシューズの買い替えどき」という目安を聞くかと思いますが、実はすり減る前にクッションがへたってしまうことがよくあるんです。そこでBROOKSでは、クッション性と耐久性の高さを両立させたソールをつくろうということで、DNA LOFTが生まれました。
ポイントになっているのは、EVAソールにラバーを練り込んだこと。ソール内の気泡をラバーが包み込むことで、気泡の膜が丈夫になり、へたれにくくなっています。また、そのぶん気泡を細かくたくさん含めるようになるため、クッション性もよりアップさせることができます。
LOFTソール。側面の凹凸模様は、足の内側を凸、外側を凹にすることで、オーバープロネーションを抑制する働きもあるのだとか。
──それぞれ名前に“DNA”と入っていますが、BROOKS DNAのソールと共通しているところがあるのでしょうか?
名前としては同じDNAがつけられていますが、ものとしては別のソールです。“DNA”がBROOKSのソールの総称になっていて、そのなかに『BROOKS DNA』と『DNA AMP』『DNA LOFT』があるというイメージですね。今後も、さらに軽いもの、高反発のものなど、新しいソールが続々と誕生していくことになるかと思います。 このように、ソールからシューズを選べるのは、ランニング専門ブランドであるBROOKSならではのポイント。厚さや材料の配合比率が違うことはあっても、ここまで根本的に違ったクッション材を複数種類提供しているブランドはなかなかないと思っています。 日本の初心者ランナーの皆さんは、あまりBROOKSのことを知らない人もまだまだいるかもしれません。でも、走っていくなかでいろいろな人のシューズを見たり、情報を集めるなかで、「BROOKSのソールがいいらしいぞ」と、初めてのシューズももちろん、二足目、三足目のシューズとして選んでもらえたら嬉しいです。また、ランニングイベントなどでも試していただける機会を増やしていますので、ぜひ参加していただければと思います。
──ランニングは“シューズさえあれば走れる”とよく言われるように、とても手軽に始められるスポーツです。でも、だからこそ唯一のギアであるシューズ選びはとっても大切。そして、そのシューズの機能の多くは、ソールの特徴によるものです。今回お話を聞いて、長年ソールにこだわりを持って進化を続けてきたBROOKSならではの着眼点を垣間見ることができました。ケガなく、楽しく走り続けるためにも、ランナーの皆さんはぜひソールに着目してみてください!