【テクノロジー図鑑vol.16】NB『FRESH FOAM』編―シンプルで快適なライド感は多くのランナーに“はまる”一足

シューズ テクノロジー図鑑

長年愛され続ける有名プロダクトから、あっと驚く新製品まで。ランニングにまつわる気になるテクノロジーを紐解く、スポリートの“テクノロジー図鑑”。第16回目のテーマは、NB「FRESH FOAM」シリーズです!

春の訪れを感じる季節になりました。花粉症の方には少し辛い季節かもしれませんが、個人的には少し出歩くだけでもワクワクしています。さてマラソンシーズンも終わり、目標レースがひと段落したこの時期はモチベーションも低迷しがち。そんな時は、シューズから気分を一新してみてはどうでしょう。

今回訪れたのは、株式会社ニューバランス ジャパン。
商品企画 フットウェアプロダクト部 マネージャーの武田信夫さんに「FRESH FOAM」シリーズについてお話を聞いてきました。

シリーズ共通のコンセプトは「快適さ」

お話を聞かせてくださった、武田信夫さん

──本日はよろしくお願いします。早速ですが、「FRESH FOAM」はどのようなシューズなのですか。

「FRESH FOAM」は、ランナーの皆さんにソフトで快適な乗り心地を提供するというコンセプトの元に開発されたニューバランス独自のミッドソール※1 テクノロジーのことです。

開発プロジェクトの始まりは、「FRESH FOAM」のファーストモデルが発売された2011年から3年ほど前にさかのぼります。当時、ニューバランス・ボストン工場の一角にある「スポーツ・リサーチ・ラボ」では、走行時の足裏にかかる圧力や重心の軌跡などの詳細なデータから最適な素材とミッドソール構造を導き出し、それをシューズデザインに落としこもうとする試みがなされていました。

それまで市場に出回る多くのシューズは、ミッドソールに異素材同士を組み合わせることでクッション性を高めることが主流でしたが、「FRESH FOAM」は素材自体の構造を工夫することで、クセがなく快適な乗り心地を実現しようと考えたのです。
※1:いわゆるソールのこと。シューズのクッショニング機能を決める重要な部分(地面に接している最下層部はアウトソールという)。

──「FRESH FOAM」を採用したシューズにはどのような特徴があるのでしょう。

キャッチコピーの「楽に走れる 360°コンフォート」にあるように、履いた時の「快適さ」が最大の特徴です。多くのランナーの悩みである、関節への負担や蒸れによる靴擦れなどのリスクを最大限に抑えられえるよう、クッショニングや通気性などを追求しています。

──現在「FRESH FOAM」シリーズにはどのようなラインナップがありますか?

今回ご紹介するものは、ZANTE PURSUIT、1080、MORE、LAZRの4種類です。「FRESH FOAM」はシリーズ全体を通して、日常使いから健康維持やダイエット目的、サブ4、それ以上を狙うランナーまで幅広い層の方に使用していただけると思います。

【FRESH FOAMシリーズ】

FRESH FOAM ZANTE PURSUIT (2019年1月発売※画像は4月発売の新色)

FRESH FOAM ZANTE PURSUIT (手前WOMEN/MEN)

「ERESH FOAM」シリーズの中でも最もミッドソールが薄く、最軽量。スピードが出しやすく、レーシングシューズに近い設計。フラットな接地を考慮し中足部のクッション性を高めている。

FRESH FOAM 1080(発売中)

FRESH FOAM 1080 (手前WOMEN/MEN)

ZANTE PURSUITと比較し、より厚みのあるソールがクッション性と安定性を実現。ランナーの脚を手厚くサポート。

FRESH FOAM MORE (2019年4月発売予定)

FRESH FOAM MORE (手前WOMEN/MEN)

厚みあるミッドソールがインパクト大。クッション性が抜群なのに加え、アウトソールにラバーを使用しないことで軽さも実現。つま先部分が上を向いている設計は、接地とともに前方に体重移動を促し推進力を生む。ウルトラマラソンのようなロングランにも最適の一足。

FRESH FOAM LAZR (2019年4月発売予定)

FRESH FOAM LAZR (手前WOMEN/MEN)

快適さとスタイリッシュなデザインを兼ね備えた一足。ランニング時はもちろん、様々な生活シーンでも「FRESH FOAM」のベネフィットを十分に感じることができる。

──シリーズを通して様々なレベルや目的を持ったランナーに対応しているのですね。

クッション性と安定性を両立するハニカム構造

──「FRESH FOAM」のミッドソールテクノロジーについて詳しく教えてください。

「FERSH FOAM」シリーズでは、ミッドソールの外側(小指側)と内側(親指側)にそれぞれ違った形状の「ハニカム構造」を採用することで、クッション性と安定性を両立しています。

こちらはZANTEのミッドソールの外側ですが、よく見るとたくさんの凹んだ六角形(ハニカム構造)が並んでいるのが分かります。

FRESH FOAM ZANTE PURSUITのソール(外側)。中心部が凹んだハニカム構造により安定性を保ちつつ、理想的なクッショニングを実現している。

一方で、ミッドソールの内側を見てみると、こちらには中央が膨らんだ六角形が並んでいます。

FRESH FOAM ZANTE PURSUITのソール(内側)。外側とは対照的に立体的なハニカム構造は、接地時の内側への倒れこみを防ぐ。

この構造の違いを、模型を使って説明しますね。
内側が凹んだ六角形は手で押すと簡単に潰れますが、立体的に膨らんだ六角形は中々潰れません。「FRESH FOAM」シリーズでは、接地時に衝撃の加わりやすい外側部分のソールにはクッション性の高い凹んだ六角形を、必要以上の倒れこみを防ぎたい内側部分のソールには、立体的な六角形を配置することで安定性を確保しているのです。

ハニカム構造模型

また、こちらのミッドソールには平面部分にも「FRESH FOAM」独自のテクノロジーが隠されています。こちらもZANTEのミッドソールの模型ですが、よく見てみると、

FRESH FOAM ZANTEのミッドソール

──小さな穴がたくさん開いていますね!

そうなんです。この部分には、レーザーを使用してわざと穴を開けています。穴が大きくなるほど素材の柔軟性が高くなるため、屈曲が必要な箇所にはより大きな穴を開けることで、抵抗を少なくしているのです。もちろん、穴の位置や大きさも独自のデータに基づいて計算されているんですよ。

──なるほど。これも単一の素材で「快適さ」をアップする工夫ですね。アッパー(ミッドソールより上の部分)の構造にはどんな特徴がありますか?

アッパーは、脚あたりが少なく柔らかな履き心地、強いていうならば「靴下を履いているような感覚」を目指し、「エンジニアード・メッシュ」を採用しています(LAZRを除く)。

「エンジニアード・メッシュ」とは、一枚のアッパーの中で、編み込みのテンションや網目の大きさを自在に変化させ戦略的に編み分ける技術です。これにより、耐久性が必要な爪先の部分は編み込みを強くしたり、通気や柔軟さが必要な甲周りは編み目を大きくするということが可能になりました。

多くのランナーにとって“はまる”一足を目指して

──2011年に発売され多くのリピーターを持つ「FRESH FOAM」ですが、今回の進化のポイントを教えてください。

今年1月発売されたZANTE の2019年版(ZANTE PURSUIT)は、過去にないようなチャレンジングなモデルだと思っています。これまではアッパーのメッシュに圧着の素材を使用していたのですが、今回は、より快適さを求めオールニット(他の素材を一切使用しない)にこだわりました。正直なところ、リピーターの皆さんはどう感じるかなと期待と不安と半々でした。

しかしながら、3月10日に開催された名古屋ウィメンズマラソンでは、1月に発売されたばかりなのにも関わらず、予想位以上の方に履いていただくことができました。フルマラソンを走る女性は、チャレンジ精神が旺盛、かつモノの選び方に関してもこだわりのある方が多いため、デザインと機能性の両軸が求められます。今回、そんな多くの女性ランナーのみなさまに選んでいただけたことは、とても嬉しく思っています。

──最後に、ランナーの皆さんへメッセージをお願いします。

「FRESH FOAM」は、シリーズを通してどのランナーにも不可欠な「快適さ」をコンセプトに開発しています。そのため、クセがなく多くの皆さんの「何か一足欲しいな」という思いに“はまる”一足だと思っています。初めの一足にも、気分を一新したい時の一足にも、ぜひ「FRESH FOAM」シリーズを試してみてください。

──世の中にはたくさんのランニングシューズがあるので、何を基準に選んだらいいのか迷ってしまいますよね。その点、「快適さ」を追求している「FRESH FOAM」は、どんなランナーの方でも手に取りやすいシリーズですね。武田さん、今日はありがとうございました。

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