ランナー必見のカラダづくり:個別指導編(4)

ケア・ラントレ ランナー必見のカラダづくり

個別指導編第4回目のランナーは、佐藤さん。昨年から走り始めて先日人生初のハーフマラソンに出場。ランニング仲間が増えるにつれて今度はフルマラソンにも勢いでエントリーしちゃった、ということで大会に向けて練習中です。自分の走りがフルマラソンでも通用するのかどうか気になるということなので、八王子スポーツ整形外科でフィジカルチェックを受けてみました!

①ヒアリング:「ハーフから先の経験がなくて、どういう状態になるのか不安です」

これまでの経験や走るときに体に不調がないかどうかをヒアリング。ランニング経験は少ないので、それ以外のスポーツや日常生活にも特徴的なことがないかを確認します。

佐藤さんのヒアリングメモ

  • 5歳から高校までバレエを習っていた。中学時代は新体操部に所属し、体は柔らかい。
  • 腰痛持ちで疲れると痛みが出てくる。やや反り腰。
  • 腹筋は弱いという自覚アリ。
  • 昨年から走り始め、現在はフルマラソンに向けて週末は10〜20kmの長い距離にもチャレンジしている。平日は週2日に5 kmほどのランニング。
  • ストレッチなどのケアはほとんどしていない。
  • 今はゆっくり長い距離を走る練習だけしかしていないけど、本当にそれだけで大丈夫なのか不安。

②測定1:長距離を無理なく走れるフォームなのかどうかチェック

ハーフマラソンでは1km6分半〜7分程度を意識して走ったそう。走るフォームに今のままで問題がないかを見てもらいました。

姿勢はきれいに見えます。ただし、お尻がやや後ろに残ったような走りとのことで、確かにわずかに腰が反っているように見えます。一歩でできるだけ体重(重心)を前に運んで行きたいので、「もったいない」という診断に。

ちなみに、バレエや新体操の経験者ということで、特徴的な動きを見せてもらうことに。やめた後は特に動かしていなかったそうですが、見事なY字バランス!ブラボー!これには稲川さんも感心。

測定2:スクワットや立ち姿勢で体のバランスをチェック

さらに立ち姿勢や両足・片足スクワットなどを4方向から撮影。

片足スクワットはグラつきがありましたが、それ以外は大きな問題はなさそうに見えます。これでも修正点があったりするのでしょうか……?

計測後は股関節周りの可動域がどうなっているかも見てもらいました。

③フィードバック:課題は股関節とお尻!

測定の結果、佐藤さんは骨盤の前傾がやや強く、お尻の筋肉もうまく使えていないとのこと。身体は柔らかく可動域は広いものの、特に右側の腸腰筋が固いのがお尻を使えていない原因。また、股関節の回旋の量に左右で差があります。
筋力はそれなりにあるそうですが、腸腰筋の固さのせいで地面を蹴りきれていない可能性があります。走りの土台を整えることで長い距離を走り抜けるよう、骨盤周りや腸腰筋のストレッチやトレーニングをやってみることにしました。

スクワットの体勢になると腰が反った状態になり、しゃがんだときに左右に開いた足の広さが若干違う。

④おすすめストレッチ:お尻や骨盤まわりのストレッチ

佐藤さんは特に右側の腸腰筋が固いということで、右側にしぼってやっていきます。

できるだけ身体を起こし、右足の膝から下を床につけ、背筋を伸ばします。身体が寝てしまうと骨盤と大腿骨の角度がなくなるので、できるだけ身体を起こし、腰を前方に突き出していきます。後ろ足の付け根を伸ばすイメージで。

同じ体勢で右膝をついたまま胸と太ももをつけ、右足首または足先を掴んで左足の方に身体を倒します。

佐藤さん「伸びてくるとちょっと痛いかも」
稲川トレーナー「苦しいときは左足をもう少し前に出しても大丈夫です」

次に左足は片膝を立てるようにして折り曲げ、右足を左の腿の先に乗せ、胸と膝を近づけます。おしりはもちろん、股関節の回旋筋を伸ばすのに有効です。

続けて、同じ体勢から浮いている右足をそのまま地面に下ろしてつけ、膝を自分の胸の方に引き寄せ、抱えます。背中が丸まっていると筋肉が伸びないので、できるだけ背筋をグッと伸ばすのがコツ。

さらに伸ばすため、右膝を倒し、その上に左足置きます。お尻はなるべく浮かさないように意識。

佐藤さん「さっきより伸びる感じがします」
稲川トレーナー「痛いときは無理せず、一回気持ちいいと思ったところまで伸ばしてやめてください」

⑤おすすめトレーニング:股関節を動かすトレーニング

ここから股関節を動かしていきます。

両膝を横に倒し、背筋を伸ばして膝ですっと立ち上がります。そして起こした状態を保ったまま下ろします。

反対側も同様に。

骨盤の位置を意識し、最初からしっかり起こした状態で上に上がることが大切。背中が丸まったり、必要以上に前かがみにならないように。もし立ちづらければ、お尻の筋肉を使えていない状態です。
意識するべき場所を稲川さんが軽く触って指示すると、佐藤さんもきれいに上がりました。

稲川さん「うまいですね〜」

今度は両膝をついて前に身体を倒し、まっすぐ立ちます。お尻がしっかり伸びていればOKですが、そうすると背中の反りが目立つので、お腹にしっかり意識を集中しながら身体をまっすぐ上げるようにしましょう。

その後バランスクッションに立て膝で乗ってみました。お尻を締め、骨盤を起こすことを意識しますが、グラグラして右にいきがちに。さらに足を浮かして、という指示には身体がふらついて不安定です。まだ意識してお尻を使えていません。

今度は横になってお尻のトレーニング。仰向けになって両膝を立て、膝までまっすぐになるようにあげ下げを繰り返します。股関節を伸展させる筋肉をこれで鍛えることができます。

その後再びバランスクッションに乗ってみると、今度はすんなり安定してバランスを取ることができました。お尻を意識して使えています。

最後に、踏み台に右足を乗せ、背筋を伸ばして左足をスッと上まで持っていき、止まります。ここでもお腹とお尻を意識。

一通りのストレッチとトレーニングを終え、最後にもう一度走ってみました。最初に走ったとき(上)より、背中がまっすぐになっています。

画像測定でも反り腰気味の最初(右)に比べて、ストレッチとトレーニング後(左)は姿勢がきれいになりました。

⑦まとめ

股関節を曲げる腸腰筋が固く、そのせいでうまくお尻の筋肉を使って地面を蹴ることができていないのが佐藤さんの課題。そこで、ストレッチをして筋肉をほぐし、骨盤を意識して股関節を動かすことで動きが改善されました。ストレッチは毎日やるのがおすすめ。何度かやれば自然と意識ができてきて、身体が動きを覚えます。さらに、走る前にストレッチをするだけでも走りやすさが変わるはずです。
トレーニングもあわせてやっていくべきです。屋外練習時は膝をつくなどは難しいので、踏み台のトレーニングの代わりに縁石を使って足を上げ、背筋を意識するなどして取り入れてもらえたら良いでしょう。
フルマラソンで疲れてきても、こうした動きが土台にあれば大きくエネルギーロスをせず走れるはず。初マラソン、ぜひ完走して欲しいですね。

八王子スポーツ整形外科のメディカルフィットネスセンターでは、90分でフィジカルチェックを行っています。走りの課題を見つけるのにも最適なので、気になることがある人はぜひ受けてみてください!

取材協力

八王子スポーツ整形外科 
〒192-0085 東京都八王子市中町5-1 八王子中町ビル3・4・6F
(スポーツクリニック)TEL : 042-626-0308
(メディカルフィットネス) TEL : 042-625-5733
最寄駅 :
JR中央本線・横浜線「八王子」駅より徒歩3分
京王電鉄京王線「京王八王子」駅より徒歩6分
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