ひざが痛い?足の裏が痛い?よくあるランニング障害とその対策とは
ランナーの多くは、ランニング中や走り終えたあとに脚の痛みを感じた経験があるはず。なかには、走るたびに痛みに悩まされる人もいるのではないでしょうか。よくある症状と、痛みへの対策についてご紹介します。
よくあるランニング障害
足底筋膜炎(そくていきんまくえん)…「土踏まずが痛い」
ランニング中やランニング後に、指の付け根からかかとの足底──主に土踏まずのあたりに痛みが出ます。朝起きたときなど、しばらく足に体重をかけていなかった状態から立ち上がるとズキンと痛みが走って、歩くうちにだんだん収まることも。「足底腱膜」とは、足底のアーチを覆う筋膜のことで、これが炎症を起こすことによって症状が現れます。直接の要因としては、アーチに過度な衝撃や負荷がかかることが挙げられます。
アキレス腱炎(アキレス腱周囲炎)…「アキレス腱が痛い」
ランニング中やランニング後に、アキレス腱やその周囲に痛みが出ます。こちらも足底筋膜炎のように、朝立ち上がるときや長時間座ったあと体重をかけると痛みが大きくなることも。オーバープロネーション気味(かかとの外側で着地するためかかとが内側にずれてしまう)の人は特にアキレス腱に負担がかかるので症状が出やすいとされています。血流量の低下も要因のひとつといわれ、寒い日の急な走り出しにも注意です。
シンスプリント…「スネが痛い」
ランニング中やランニング後に、脛(すね)の下部に痛みが出ます。なかでも、脛の内側に痛みが出ることが多いようです。ヒラメ筋や後脛骨筋、長趾屈筋などの筋肉(主に脚のひざ下部分に集まる筋肉)に過度な収縮が起きることが要因のひとつとして挙げられます。筋肉に過度な収縮が起きてしまうのは、骨盤のスタビリティ(安定性)の低下から股関節が内旋(内側にねじれる)し、姿勢維持のために筋肉へ余計な負担がかかることなどが考えられます。
腸脛靭帯炎…「ひざが痛い」
走り始めやランニング中、ランニング後に、ひざの外側に痛みが出ます。ひざの上部──大腿骨外側にある脂肪体と腸脛靭帯が、ひざの曲げ伸ばしによってこすれるため痛みが出るといわれています。ひざ上部の大腿筋に負荷がかかると症状が出やすいとされています。特に、長時間走り疲労がたまってきたころにフォームが崩れると、ひざ周りの筋肉を余計に使って前に進もうとしてしまうため痛みが出やすく要注意です。
痛みが出てしまった場合のセルフケア方法は?
アイシング
痛みは主に筋肉の炎症によって引き起こされているため、冷やすと痛みが和らぐことが多いです。ビニール袋や氷嚢に氷水を入れて、10分から15分間、患部に当てましょう。
ストレッチ
患部周辺の筋肉を伸ばす場合は、20秒以上続けて伸ばすのが効果的です。伸ばす時間が短いと、反対に筋肉を縮める反射の動きが出てしまうため、ゆっくりじんわりと伸ばすようにしましょう。
※注意点
ここでご紹介したのはあくまでも応急処置的なセルフケアの方法です。鋭い痛みがあったり、なかなか症状が和らがない場合は、専門機関でみてもらうようにしましょう。放っておくと、痛みがある部分をかばってほかの場所に負荷がかかり、違う症状が出てしまう恐れもあります。不安があるときは、できるだけ病院で診断してもらったり、治療院に相談するのがおすすめです。
ずばり、痛みの原因って?
多くのランナーが一度は経験する脚の痛み。いったい原因は何なのでしょうか? 治療院&トレーニングジム『TREAT(トリート)』の矢田大(ひろむ)先生にお話を聞きました。
──主なランニング障害には「足底筋膜炎」や「アキレス腱炎」「シンスプリント」「腸脛靭帯炎」などがあるとのことですが、それぞれ原因となるのはどんなことなのでしょうか?
原因を断定したくなる気持ちはとてもわかるのですが、ランニング障害はさまざまな要因が少しずつ絡み合った結果出てくるものです。骨格の違いや日常生活での体の使い方、過去に負ったケガなども影響してきます。そのため、「この動きはだめ」「この練習法はよくない」など、一般化して言えることがなかなかないんです。ただし、「きれいなフォームで走ること」の重要性は共通して言えることですね。フォームが崩れると筋肉に余計な負荷がかかってしまいます。その負荷が積み重なって痛みにつながってしまうケースはとても多いです。
──では、きれいなフォームで走るにはどんなポイントに気をつければよいでしょうか?
心がけてほしいのは、「足首からの前傾」「体の真下での接地」「180のケイデンス」「コンパクトアームスイング」の4つのポイントです。
足首からの前傾
よく、望ましくないフォームの例として挙げられる「腰が落ちた」状態は、足首からの前傾ができていないことによる場合が多いです。腰からではなく足首から前傾することで、足を運びやすくなります。余計な力を使わず、効率的に前へと進めるようになるのです。
体の真下での接地
体の真下で接地できず、前で着地してしまうのがいわゆる「オーバーストライド」です。オーバーストライドになっているとブレーキがかかり、衝撃が強くなります。前に進む力が落ちるため、ほかの筋力で推進力を補おうとしてしまい、余計なエネルギー消費にもつながります。
180のケイデンス
ケイデンスとは1分間あたりの回転数(=歩数)のことで、これを180ほどにキープすることをおすすめしています。ランニングは、ケイデンスとストライド長で速さが決まりますが、ストライド長ばかり伸ばしてしまうと上下動が増えて一歩一歩の負荷が大きくなっていきます。初心者ランナーは「ゆっくり」走ろうと意識するあまり、ついついケイデンスが落ちてそのぶんストライド長が大きくなりがちです。リズムが遅くなりすぎないよう、ケイデンスも意識してみてください。
コンパクトアームスイング
肩周りなどに余計な力が入らないよう、リラックスして肩甲骨からコンパクトに腕を振るのがポイントです。コンパクトにぶれない腕振りができると、骨盤が前に出やすくなり、スムーズな足運びへとつながります。
ここでご紹介した4つのポイントも、それぞれがつながり合っています。たとえば、足首から前傾できれば、自然と体の真下で接地するようになり、結果的に歩幅が小さくなってケイデンスが180に近づく……というように、ある意味「どれかができるようになれば自然と全体が整うはず」とも言えるかもしれません。脚に痛みがある方は、無理のない範囲でストレッチやアイシングなどでケアしながら、少し長いスパンでフォームの見直しをしてみてください。
まとめ
今回は、よくあるランニング障害についてお伝えしました。痛みに悩まされないようにするためには、まずフォームを見直してみることが大切なのですね。きれいなフォームで走ることの大切さは漠然と理解していたけれど、どんなふうにつながり合っているのか、ということまで意識したことのある人は意外と少ないのではないでしょうか。無理なく楽しく走り続けるためにも、ぜひ4つのポイントを意識してきれいなフォームを目指してみてください。
取材協力・監修
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