【パラチラン】〜番外編〜 エネルギー補給のできる飲料&サプリメント“Challenger”について、パワースポーツ様に開発秘話や使い方をお聞きしました!
スポリートでランニング企画にチャレンジ中の三井製糖の稲葉さんは、営業としてさまざまなメーカーと交流しています。商談の傍ら、ランナーに役立つ有益な情報をぜひスポリート読者にも伝えたい!と、取材にもチャレンジすることになりました。 今回は糖質補給のできるドリンク用パウダーやリキッド(ジェル)といった「Challenger」シリーズを手がける、パワースポーツの滝川次郎さんにお話を伺っていただきました。
【開発の背景1】他に類のない“エネルギーの摂れる飲料”を目指して、ドリンクタイプを開発
稲葉 : パワースポーツは米国の「パワーバー」の日本総代理店として事業を拡大し、エネルギー補給食品やスポーツ飲料、関連グッズの販売、アウトドアイベントの企画運営などを幅広く手がけておられます。三井製糖とパワースポーツさんの出会いは4年前の宮古島トライアスロンだったと伺っています。当時の営業は私の前任の者でした。
滝川 : そうなんです。そこでお互い出展していて、ブースでパラチノースの説明を受けたのが最初でした。当時は耐久スポーツを行う際に飲む飲料といえばアイソトニック飲料が主流。水分でエネルギーを摂れるものが世の中になかったんです。パラチノースの特性を聞いて、これは他にないものが作れそうだ、と商品開発をスタートさせました。
稲葉 : 長距離耐久レースだと飲み物でエネルギー摂取というと専用のものはなくて、コーラを飲んだりしますね。
滝川 : 疲れてくるとジェルや固形物は受け付けられなくなる人もいますが、飲み物なら飲めますし、カロリーを摂るための飲料としてコーラっていいんですよ。トライアスロンやトレイルランニングのようなところではよく見ます。でもコーラのような甘い物は急激に血糖値を上げてくれますが、やはり急激に下がってしまうのがネックです。パラチノースはゆっくり吸収されるのが特徴なので、これを特性の異なる糖と一緒に配合すれば、エネルギーを長持ちさせるものができると考えました。早くエネルギーになる糖、ゆっくり吸収される糖などの配合を調整していきましたが、カロリーが鍵で、水に溶かして500mlで300calにすることが目標でした。何度も試作をして最終的には500mlで280calが摂れるところに落ち着き、2017年に最初の商品である、水に溶かすパウダータイプの「POWER DRINK Challenger」が完成しました。
稲葉 : コーラは甘くて、ときにはしつこいと感じるときもあります。パラチノースは通常の糖よりも甘さが半分で、カロリーを上げても甘くなりすぎないので、その点でもお役に立てたのかなと思います。あとは、コーラ以外ではジェルを水に溶かして飲んだりする人もいますね。それよりはパウダータイプならお手軽ですよね。
滝川 : 打倒コーラというとなんですが、やはり他にないものだからこそ作ってみたい想いがありましたね。
「POWER DRINK Challenger」250円(税別)。
【開発の背景2】走りながら片手でもエネルギー補給できるリキッドタイプが新登場!
滝川 : このドリンクタイプはボトルを携帯する自転車レースやトライアスロン、トレイルランニングのようなところでまず評判を呼びました。長距離でもトヨタ自動車陸上長距離部が水分補給とエネルギー補給が同時にできると好評で、取り入れていただいています。
稲葉 : 2019年にはリキッドタイプが開発されましたね。
滝川 : 飲料は一気に大量に飲むことはできないので、ジェル(リキッド)タイプの開発は必然でした。そこで2019年の10月に発売したのが、「Challenger POWER LIQUID」のパキッテ容器タイプです。パキッテ容器というのは、真ん中を折ってジャムやソースを絞り出すのに使われている容器で、誰しも一度は見たことがあるのではないでしょうか。これの新しい使い方を模索しているということで相談を受けたんです。片手で使えて手を汚さない、という特性は持久系スポーツをするにはぴったりだと思いました。なぜなら疲れてくると袋を開けたりするだけでも億劫になってうまく開けられなかったりしますし、開けるときに中味で手が汚れてベタついてしまうからです。そこで「Challenger」をリキッドにして充填すればいいなと。パキッテ容器は片手で折るだけなので、手を汚さずそのまま口につけて、一瞬でエネルギー補給できるというのが最大のメリットです。この容器をスポーツ関連の商品に使うのは世界初。ソースなどを入れる容器という認識なので最初は驚かれましたが、片手ですぐ口に補給できる、というのはかなり画期的だと思います。
稲葉 : こちらの開発の苦労点を教えてください。
滝川 : やはりこのパッケージの容量でどこまでカロリーを上げられるか、でしたね。だいたいどのメーカーもジェルは100calなので、それと同等にする必要がありました。課題は固さです。パラチノースは入れすぎると固まって飴のようになってしまうので、適切な溶解度を探った結果、34gで90calになっています。マグネシウムを配合して、足がつるのや痙攣などの軽減について考慮しており、カフェインのあり・なしも選べます。
「Challenger POWER LIQUID」カフェイン入り、通常タイプ。各250円(税別)
ソースなどで見る、真ん中からパキッと折るタイプのパッケージ。
稲葉 : カフェインはロングディスタンスのレースだと集中力持続や眠気覚ましには欲しいですが、短い距離だとトイレに行きたくなるという人もいるので、選べるのはいいですね。この前出展したマラソン大会で、カフェインありのジェルを摂ったせいで、トイレに行きたくなり、それでタイムアウトになってしまったという方のお話も伺いました。 また、2020年の2月にもこのリキッドタイプの新製品が出ましたね。
滝川 : こちらは少し容量を上げた40gで100cal、切り取り口が完全に離れないようになっている、環境配慮型商品です。味もグリーンアップル・レモン・梅の3種類で、カフェインあり・なしがあります。違いは容量とパッケージの形ですが、使い分けていただければと思っています。
「Challenger POWER LIQUID」グリーンアップル(カフェイン入り)、レモン、梅。各200円(税別)
【おすすめの使い方】練習は飲料でパフォーマンスアップし、レース時にはリキッドタイプを時間ごとに補給するのがおすすめ
稲葉 : ドリンクとリキッド、それぞれランナーはどう使えばいいのか教えてください。
滝川 : 練習でも、レースでも使っていただきたいですね。練習の際はドリンクでパフォーマンスを高めるといいと思います。ただの水を飲みながらやるより、エネルギーを補給しながらの方がパフォーマンスの高い練習を効率よくできます。また、レース前のカーボローディングやウォーターローディングにもドリンクは便利です。「Challenger」は手軽に使ってもらいたいので、200円〜250円と手頃な価格に押さえることも努力したんですよ。
稲葉 : 市民ランナーだと、本番前の30kmランとか、強度を高めた練習のときなんかが特によさそうですね。普段もエネルギーを摂りながら走ると疲労感も違うと思いますし。日常使いしてもらいたいですね。
滝川 : フルマラソンなどのレース時は、リキッドタイプを自分のタイムに合わせて必要分を持ち、補給しながら走ってください。当社では45分〜1時間に一度の補給を推奨しています。私はフルマラソンに出るときは5〜6個は持ちますね。
稲葉 : 摂取が45分単位というのはどうしてですか?
滝川 : 90〜100calを消費するのが45分〜1時間ほどだからです。10kmに1時間かかる人もいれば、30分で走る人もいます。ランナーによって身体能力は異なるので、時間で目安を決めて均等に採った方が、常にエネルギーを持続させられると考えています。フルマラソンに5〜6時間かかる人は2時間半で走る人よりエネルギーが必要ですからね。それに、一定の時間ごとにエネルギーが入ってくることを身体に覚えさせて、エネルギーを安定的に使えるようにしていく方がいいと思います。また、疲れてくると胃が固形物を受け付けなくなる人もいます。主成分のパラチノースがゆっくり吸収される「Challenger」は胃への負担が少ないので、その点でもおすすめです。そこが速効性のエネルギーになるマルトデキストリンを主原料にしたジェルとは違う点ですね。
【今後の展開】新製品のChallenger POWER LIQUIDを多くの人に使ってもらいたい
稲葉 : 新製品が出たばかりではありますが、今後はどのような展開をお考えですか?
滝川 : まずはこのリキッドタイプを多くの人に使っていただきたいです。海外の人にも使ってもらえるくらい、認知度を高めたいですね。味も評判を聞いてバリエーションを増やすのもいいかもしれません。同じ味だと長いレースでは飽きることもあるので、いろいろある方がランナーにもいいでしょうし。いずれは固形のバータイプなどにも展開していけるといいのかなと思いますが、それは次の目標ですね。当社は元々「パワーバー」のシリーズでアスリートの認知度を得てきました。そこに今回は「Challenger」というシリーズが出た。それぞれに良さはあるので、使い分けていただけたらと思っています。
稲葉 : エネルギー補給食品の第一人者であるパワースポーツさんだからこその展開、これからも楽しみにしています。今日はありがとうございました。
【取材を終えて】
「Challenger」シリーズはご自身がロングディスタンスのレースにも出られるという滝川さんだからこそ、実体験から得られたノウハウや要望が詰まった商品に仕上がっていると思います。先日出られた170kmを越えるレースには55個ものジェルを持参したそうですが、やはり良いパフォーマンスを持続させるにはどういうものが自分にいくら必要かを吟味して、十分に準備することが大切なようです。
私は仕事でマラソン大会に行くことが多いのですが、ランナーの方々と話していると、やはりジェルタイプのエネルギー補給食を欲しがっている人が多い印象です。「Challenger」はドリンクに続いて待望のリキッドタイプが出たので、今後のランナーの反応を楽しみにしています。