【笹川スポーツ財団】新型コロナウイルスによる運動・スポーツへの影響に関する全国調査/ポストコロナを見据えた持続可能なスポーツライフの在り方

イベント リリース情報

スポーツ観戦の感染対策「大声での応援」「混雑」制限が定点調査で増加
スポーツ・フォー・エブリワンを推進する笹川スポーツ財団(所在地:東京都港区赤坂 理事長:渡邉一利 以下:SSF)では、 2020年6月、 10月、 2021年2月と4カ月ごと、 計3回にわたり、 全国の18~70歳代を対象とする定点調査、 「新型コロナウイルスによる運動・スポーツへの影響に関する全国調査」を実施いたしました。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、 私たちの日常生活に影響を及ぼすとともに、 調査結果・分析から、 スポーツを「する」「みる」活動にも大きな変化をもたらしたことが明らかとなりました。 運動・スポーツの本質を再考するきっかけになるとともに、 新型コロナウイルス感染拡大終息後の、 豊かなスポーツライフの在り方の提示に結びつきました。 また、 スポーツ観戦時の感染対策への期待に大きな変化がみられました。

▼公式サイト
https://www.ssf.or.jp/thinktank/policy/covid19_04_202107.html

調査結果のポイント

1.   新型コロナウイルス感染拡大後、 全体の運動・スポーツ実施割合は減少傾向。 エクササイズ系種目が減少傾向、 スポーツクラブや施設を利用して行う「ゴルフ」などは、 横ばい・増加傾向。 (図表1)

「運動・スポーツを行った」(全体)/ 2~5月 50.1%  →  6~9月 44.8%  →  10月~1月 47.4%
「ウォーキング」/ 2~5月 27.1%  →  6~9月 23.1%  →  10月~1月 25.2%
「ゴルフ(練習場)」/ 2~5月 2.7%  →  6~9月 3.2%  → 10月~1月 3.4%

2.  分析結果から、 多様な種目を行う者ほど、 運動・スポーツ習慣の定着や継続には有効であった。 多様なスポーツを楽しめる環境の整備が運動・スポーツの持続可能性を高める。 (図表3)

3.  スポーツ観戦において、 日常的な感染対策からスポーツイベントだからこそ必要な対策を求める潮流へ(図表4)

「人と人との間隔を確保するための入場者数の制限や誘導」
 2~5月 15.1%  →  6~9月 22.5%   →  10月~1月 21.2%
「大きな声での会話や応援、 肩組みでの応援に対する注意喚起や制限」
 2~5月 1.9%  →  6~9月 11.6%   →  10月~1月 10.8%

担当者コメント

新型コロナウイルスの感染状況の変化が、 運動・スポーツ実施などに及ぼす影響を把握するため、 2020年6月、 10月および2021年2月の3回、 4ヵ月ごとに調査を実施した。 ウォーキングなどの自宅やその周辺でできるエクササイズ系種目とゴルフなどスポーツクラブや施設を利用する種目では実施率の推移は異なり、 後者はスポーツクラブや施設の休業・再開が影響した1年であったといえる。

またスポーツ観戦では、 調査を重ねるにつれ、 消毒液の設置など日常的な感染対策より入場者数の制限や誘導、 応援の仕方に関する注意喚起や制限といった、 スポーツイベントだからこそ必要な対策を求める人が増加している。 東京2020オリンピックでは、 各種目収容定員の50%以内で1万人を上限に、 開会式では関係者を含め2万人が来場すると言われている。 人々が安心して観戦できるよう来場者ごとの入退場時間の指定など、 試合前後の人の動きの分散させる仕組みの導入についても期待したい。

【笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 政策オフィサー 鈴木貴大】

調査結果 詳細

1.   新型コロナウイルス感染拡大後、 全体の運動・スポーツ実施割合は減少傾向。 エクササイズ系種目が減少傾向、 スポーツクラブや施設を利用して行う「水泳」や「ゴルフ」などは、 横ばい・増加傾向。

2020年6月、 10月、 2021年2月に実施した4カ月ごと(2020年2~5月、 6~9月、 2020年10月~2021年1月の実施状況)の種目別運動・スポーツ実施率の結果を比較した。 全体の実施状況をみると「運動・スポーツを行った」は2~5月50.1%、 6~9月44.8%、 10月~1月47.4%と、 2~5月と比べ6~9月、 10月~1月は減少していた。

種目ごとの実施率では、 「ウォーキング」(2~5月27.1%→6~9月23.1%→10月~1月25.2%)や「散歩(ぶらぶら歩き)」(18.4%→12.2%→14.2%)など自宅や自宅周辺で比較的気軽に行えるエクササイズ系種目は2~5月と比べ、 6~9月、 10月~1月は減少している。

一方、 「ゴルフ(コース)」(3.0%→3.5%→3.6%)や「ゴルフ(練習場)」(2.7%→3.2%→3.4%)、 「水泳」(1.5%→2.2%→1.7%)など、 スポーツクラブや施設を利用して行う種目の実施率は2~5月と比較して増加から横ばいの傾向がみられる。2020年4月に発令された緊急事態宣言の影響によるスポーツクラブや施設の休業やその後の再開が人々の運動・スポーツ実施に影響を与えたと推察できる。

図表1 種目別運動・スポーツ実施率の推移


■新型コロナウイルス感染拡大前後における種目別運動・スポーツ実施率
新型コロナウイルス感染拡大前の1年間(2019年2月~2020年1月)と、 感染拡大後(2020年2月~2021年1月)の種目別運動・スポーツ実施状況を比較した。 「ウォーキング」を除く種目で減少しており、 「散歩」3.7ポイント減(19.5%→15.8%)と減少幅が最も大きく、 「サイクリング」(5.3%→3.7%)1.6ポイント減、 「筋力トレーニング」(12.6%→11.1%)と「水泳」(4.2%→2.7%)1.5ポイント減となっている。

図表2 新型コロナウイルス感染拡大前後における種目別運動・スポーツ実施率

2.  分析結果から、 多様な種目を行う者ほど、 運動・スポーツ習慣の定着や継続には有効であった。 多様なスポーツを楽しめる環境の整備が運動・スポーツの持続可能性を高める。

2020年6月、 10月および2021年2月の3回にわたり、 5,000人(第3回の2021年2月調査のみ5,005人)を対象に実施された調査において、 6割を超える3,281人がすべての調査に回答した。

3,281人の運動・スポーツ実施率をみると、 新型コロナウイルス感染拡大以降の実施率上位5種目はいずれの調査でも「ウォーキング」「散歩(ぶらぶら歩き)」「筋力トレーニング」「ジョギング・ランニング」「体操(軽い体操、 ラジオ体操など)」である。 これらは、 1人でスポーツ施設を利用しなくても気軽に行えるエクササイズ(=運動)であり、 どの期間でも、 運動・スポーツ実施者の約8割がこの5種目のいずれか1種目以上を実施していた。 人々の日常的な運動・スポーツのベースであると考えられる。

A群:エクササイズ系上位5種目のうちいずれか1つ以上を実施し、 その他の種目を実施していない
B群:エクササイズ系上位5種目およびそれ以外の種目をそれぞれ1つ以上実施
C群:エクササイズ系上位5種目を実施しておらず、 それ以外の種目を1つ以上実施


図表3 新型コロナウイルス感染拡大前後の実施種目群の変化

新型コロナウイルス感染拡大前(2019年2月~2020年1月)の運動・スポーツ非実施群は45.8%であった。 各群の割合をみると、 A群22.4%、 B群20.5%、 C群11.3%であった。

感染拡大後(2020年2月~2021年1月)の運動・スポーツ実施率は、 感染拡大前A群が72.7%、 B群90.0%、 C群72.2%という結果で、 エクササイズを含む多様な種目を実施しているB群において、 運動・スポーツの継続実施率が高かった。日常化しやすいエクササイズ種目に加えて、 その他の種目を行うことが、 運動・スポーツ習慣の継続に効果的であることが示唆される。

今後、 国や地方自治体には、 健康の保持・増進のための運動・スポーツの定期的、 継続的実施の視点に加えて、 仲間との交流、 余暇活動の楽しみなど、 豊かなスポーツライフに着目した複数種目の実施を促す施策を期待したい。

3.  スポーツ観戦再開に向けてイベント主催者に期待する感染対策は、 日常的な感染対策からスポーツイベントだからこそ必要な対策を求める潮流へ。 2020年東京オリンピック・パラリンピック大会やイベント・大会への活用を。

2020年10月~2021年1月の期間にスタジアムや競技場に足を運んで観戦していない人が、 今後直接観戦を再開するために、 イベント主催者に期待する対策を図表4に示した。 (比較する際には、 6月調査は新型コロナウイルスの影響がない時期であるため、 日常的に観戦をしていない層が対象であり、 10月調査と2月調査ではこの層に加えて新型コロナウイルスへの不安から観戦を控えている層も対象となっている点に留意する必要がある。 )

3期間の推移をみると、 スポーツ以外の場でも積極的に呼びかけられていた「アルコール消毒設備の設置やスタッフのマスク着用、 室内の換気」(28.6%→26.2%→23.2%)、 「来場者へマスク着用を呼び掛けるなど、 感染拡大防止のための注意喚起」(21.5%→16.2%→13.9%)の割合は徐々に減少している。

一方で、「人と人との間隔を確保するための入場者数の制限や誘導」(15.1%→22.5%→21.2%)、 「大きな声での会話や応援、 肩組みでの応援に対する注意喚起や制限」(1.9%→11.6%→10.8%)など、 大人数が集まるイベントやスポーツだからこそ必要な対策は10月調査以降増加傾向である。間もなく開催される2020年東京オリンピック・パラリンピック大会や、 その他イベント・大会主催者は、 このような人々のニーズを注視しながら感染対策を講じる必要がある。

また、 「今後しばらくはスタジアムや競技場での観戦を控える」と回答した人は6月調査8.3%、 10月調査10.6%、 2月調査13.7%と期間を追うごとに観戦に対して慎重な層の割合が増加している。

図表4 スポーツ観戦再開に向けてイベント主催者に期待する対策


■実際にスポーツ観戦をした人で、 最も評価が高い感染対策は、 「アルコール消毒設備の設置やスタッフのマスク着用、 室内の換気」

2020年10月~2021年1月の期間にスタジアムや競技場に足を運んで観戦したと回答した人を対象に、 会場で実施されていた感染対策が「十分だと感じた」人の割合を図表5に示した。 全体では「アルコール消毒設備の設置やスタッフのマスク着用、 室内の換気」が74.7%と最も高く 、 「入場時の検温」69.7%、 「座席ごとに入退場時間を指定するなど、 人の混雑を避けるための対策」「大きな声での会話や応援、 肩組みでの応援に対する注意喚起や制限」66.8%と続く。

性別にみると、 男女とも「アルコール消毒設備の設置やスタッフのマスク着用、 室内の換気」(72.8%、 77.9%)が最も高く、 男性は「入場時の検温」68.6%、 「座席ごとに入退場時間を指定するなど、 人の混雑を避けるための対策」66.0%と続く。 女性の2位以下は「入場時の検温」が71.7%、 「大きな声での会話や応援、 肩組みでの応援に対する注意喚起や制限」69.9%と続く。 男女で最も差が大きい項目は、 「来場者に感染者が出た場合、 早期に来場者へ連絡ができる仕組み」で男性60.7%、 女性49.6%で11.1ポイント差であった。

図表5 スタジアムや競技場における感染対策への評価(%)

注)感染対策を行っていたと回答した人のうち、 「十分だと感じた」人の割合。

調査概要

1. 調査の目的
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、 人々のスポーツ活動環境は「新しい生活様式」に合わせて変化を強いられてきた。 その中で、 人々の健康意識の向上や新しい観戦方法の確立などスポーツへの期待は高まりつつある。 こうした環境下で、 国民の身体活動・運動の実施状況やスポーツ観戦等のニーズがどのように変化しているのかを調査した。

調査は、 新型コロナウイルスの感染状況の変化が、 運動・スポーツ実施やスポーツ観戦にどのような影響を及ぼすのかを把握するため、 2020年6月、 10月および2021年2月の3回、 4ヵ月ごとに実施した。 定点調査の比較を行うことで、 新型コロナウイルス感染拡大前と拡大後における人々のスポーツライフの動向を示している。

2. 調査対象
全国の市区町村に在住する18~79歳までの男女5,005人(5,005サンプルが地区ごとの性別・年代別人口構成比率に近似するよう割当)

3. 調査方法
1. 調査手法:インターネット調査
2. 査委託機関:株式会社クロス・マーケティング

4. 調査時期
2021年2月2日~2月5日

5. 主な調査項目
基本属性_居住地、 性別、 年齢、 職業、 世帯年収、 配偶者・子どもの有無、 配偶者との家事・育児分担等
1)運動・スポーツ実施状況、 実施頻度
2)新型コロナウイルスの影響による生活の変化
3)新型コロナウイルスの影響によるスポーツ環境の変化
4)スポーツ観戦状況(直接スポーツ観戦、 テレビやインターネットによるスポーツ観戦)
5)直接スポーツ観戦実施者からみた各種対策への評価
6)スポーツ観戦再開に向けて、 イベント主催者に期待する対策
7)運動・スポーツの実施時に気を付けていること
8)新型コロナウイルスによる心身の状態への影響
9)東京2020オリンピック・パラリンピックへの期待とその理由、 望ましい開催形式
10)身の回りにおける新型コロナウイルス感染状況
11)テレワーク、 時差出勤等の実施頻度と運動・スポーツへの影響
12)自転車の利用状況と目的別の利用頻度の変化
13)身体を動かすことの好ききらい

6. 3回の調査で明らかにした、 運動・スポーツ実施状況、 実施頻度およびスポーツ観戦状況の対象期間は以下である。

1. 2020年6月調査
・2019年2月~2020年1月(新型コロナウイルス感染拡大前の1年間)
・2020年2月~5月(調査時点の過去4ヵ月間)
2. 2020年10月調査
・2020年6月~9月(調査時点の過去4ヵ月間)
3. 2021年2月調査
・2020年2月~2021年1月(新型コロナウイルス感染拡大状況下の過去1年間)
・2020年10月~2021年1月(調査時点の過去4ヵ月間)

7. 調査の実務担当者
笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所
 政策オフィサー 鈴木 貴大
 政策オフィサー 清水 恵美
 シニア政策ディレクター   澁谷 茂樹

笹川スポーツ財団について

公益財団法人 笹川スポーツ財団は、 「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進するスポーツ分野専門のシンクタンクです。 国、 自治体のスポーツ政策に対する提言策定や、 スポーツ振興に関する研究調査、 データの収集・分析・発信を行い、 「スポーツ・フォー・エブリワン社会」の実現を目指します。

■公益財団法人 笹川スポーツ財団
名称 : 公益財団法人 笹川スポーツ財団
代表者 : 理事長 渡邉 一利
所在地 : 〒107-0052 東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
設立 : 1991年3月
目的 : スポーツ・フォー・エブリワンの推進
事業内容:
・生涯スポーツ振興のための研究調査
・生涯スポーツ振興機関との連携事業
・生涯スポーツ振興のための広報活動
URL :https://www.ssf.or.jp/

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