裸足ランニングを正しく知ろう

ケア・ラントレ 裸足ランニング

最近、裸足ランニング(ベアフットランニング)や、靴底に高低差のないベアフットシューズを使ったベアフットトレーニングに注目が集まっています。しかし言葉とは裏腹に、こうしたトレーニングの意味やシューズへの理解が深まらないまま走っている人も多いのでは、という懸念もあります。ベアフットにはどのような効果があり、普段のトレーニングではどう取り入れるべきなのか、正しい知識を持つのは大事なこと。シューズアドバイザーであり現役ランナーでもある藤原岳久さんが定期的に行っているランニングイベントの裸足ランを取材し、お話を伺いました。

ベアフットランニングは一時期盛り上がったけれど…

日本でベアフットランニングのブームが起こったのは2010年頃。アメリカで裸足ランに火が付き、開発されたベアフットシューズが入ってきたことがきっかけです。とはいえ、このブームは数年で収束します。アメリカではランニングドリルのクリニックがさかんに行われ、シューズの使い方が広まりましたが、日本では使い方やドリルが浸透しませんでした。正しい知識がないままベアフットシューズで走った日本人は怪我をしたり、合わないと思った人が脱落していってしまったのです。藤原さんも最初にベアフットシューズを履いたときは肉離れを起こしてしまったと言います。しかし、日本でもランニング文化が形成されていくにつれ、ベアフットランニングの効果やトレーニングへの取り入れ方も知られるようになり、再び盛り上がりを見せています。

ベアフットランニングとは体全体を使って考えること

「ベアフットムーブメントの最大の功績は、体の使い方を考えるようになったこと」と藤原さんは言います。形状やクッション性などが考えられたランニングシューズは、いわば走りやすさを追求して進化してきたもの。足をつき、蹴り出すことがシューズの性能のおかげで容易になります。しかし、裸足、あるいは底が薄く平らな靴で走るベアフットトレーニングはシューズに頼ることができません。考えて体を使わないとうまく前に進まないのです。考えるとはどういうことかといえば、例えば砂浜を走るときはベアフットのつま先を使う前さばきだけでは砂を掘る形になり、着地してから蹴り出すまでが長くなって足が沈んでしまいます。なので、なるべく体の真下を意識し、ジャンプするように足を使うとうまく走れます。この、考えて体を使うようになれるというのがベアフットの一番のポイントで、体を倒し重力で足が前へ落ちていく中、ベストなポジションで足をつくために、股関節や膝、足首といった体全部でクッションを作り、負荷の少ない走り方ができるようになっていきます。裸足でいいのは足裏でその感覚をダイレクトに感じ、動作を意識しやすいことです。砂浜のほか、芝生が裸足ランニングに向いています。

こうしたトレーニングを積むことは、自分で走り方をマネジメントしていく力になります。怪我が多いという人は足元の見直しが必要だし、走れているけれど前に進んでいないという人は、砂浜やトレッドミルを使って自分で走る動作を作る練習をするのがいいそう。そう難しくはなく、「痛いから優しく足をつこう、こう使うと痛くない、と考えつつやっていくことでスタビリティ(安定性)が上がっていく」と藤原さんは言います。考えることは結果的にランニング動作の改善につながり、怪我予防にもつながります。それこそがベアフットランニングがもたらす効果といえるでしょう。

ベアフットはトレーニング法の一つと考えて行うのがベスト

気をつけたいのはそればかりにならないこと。ベアフットはあくまでトレーニング法の一つ。同じ走るという動作でもタイムを上げるのとフォームを良くするのでは当然違う方法が必要なはず。ベアフットやそれぞれのトレーニングは全く別の種目をやる感覚で、道具(シューズ)も使い分けるべきだと藤原さんは言います。「ベアフットは体自体が考えますが、長く続けられるトレーニングではありません。一方、トレーニングシューズはクッションがあって走りやすいですが、靴の性能に頼りすぎてしまいます。どちらもそれぞれ良い面があり、最近は複数の機能の異なるシューズを履き分けることが推奨されるようになってきています」。

この日のビーチランでも裸足で走ったあとトレーニングシューズを履くとは感覚が変わり、足が軽くなったというランナーの感想がありました。これは砂浜で体の使い方をつかむことで、トレーニングシューズを履いたときも靴の持つ機能を生かせているからだそうです。トレーニングシューズがベアフットを使うことでより快適になったとも言えるでしょう。ですが当然この感覚は永遠に続きません。シューズを履き分けてバランス良くトレーニングすることが、ランニング自体を上達させることにつながります。「エクササイズとしてのランニングなら目安は週に1回程度ベアフットで走れば良く、それも長い時間ではなく短時間を集中して走ることを心がけて欲しい」と藤原さんは言います。ビーチランのようなところから気軽にスタートするのも良し、自分に合うベアフットシューズを探すのも良し。そして走ることが上達した人ほど、トレーニングに応じた道具(シューズ)をしっかり使い分けて欲しいという藤原さん。

「その方が楽しく、怪我もせずに走れます」。

この日のビーチラン

藤原さんが主催する藤原商会ではさまざまなランニングイベントを主催しています。月に2回行われる「ゼビオランニングユナイテッド定期ラン」でのビーチランにお邪魔しました。

8:00 集合

平塚駅から徒歩3分、ランニングクラブの拠点である「湘南ひらつか太古の湯」に参加者が集合。この日は約10名が参加しました。まずはウェーブストレッチリングを使用して、足指や足裏のストレッチ。指の間に器具を挟んで開いたり、土踏まずをほぐします。日常生活ではあまりしないストレッチは慣れないと痛いような、痛気持ちいいような…。

8:15 出発

ビーチを目指して出発。初心者でも無理のないスピードで走り、まずスタート地点から数百メートルのところにある公園で全身の準備運動を行います。

8:30 海に到着

約1キロで海辺に到着。ここで裸足になり、ランニング開始。まずは藤原さんからアドバイス。裸足で走るときは砂浜を掘る形になってズボズボ足が埋まってしまうため、なるべく体の真下ぐらいでジャンプするように走ると良いそうです。簡単なレクチャーのあと、約1キロ先にあるひらつかビーチパーク目指して裸足ランニングスタート。裸足なので濡れても良く、波打ち際を走るのがとても気持ちよさそう。夏は避暑目的でこのビーチランをよくメニューに取り入れているそうです。

8:45 ひらつかビーチパーク到着

ひらつかビーチパークで一旦ランニングをストップ。持参したコーンを使い、各種フットワークを行いました。足元が柔らかい砂の上なので、足裏でしっかり地面を捉えて身体のバランスを取るために、こうしたフットワークもトレーニングの一つとして有効です。

9:30 スタート地点の砂浜に戻る

シューズを脱いだ場所まで再び1キロの砂浜を戻ります。最初は慣れない砂浜も、裸足で走るうちに感覚をつかみ、フットワーク練習などの成果もあって「行きよりも帰りの方が、足が軽く感じた」という参加者の声が聞かれました。波打ち際でクールダウンしたあとはシューズを履き、スタート地点の「湘南ひらつか太古の湯」へと戻ります。

10:00 到着

戻ってきたあとは、天然温泉で汗を流して疲れを癒し、2階レストランで参加者たちが交流しつつ昼食を取って解散。お疲れ様でした!

全長約4キロの平塚海岸は海水浴やサーフィン、またひらつかビーチパークにはビーチバレーコートもあり、海辺のアクティビティを楽しむのに人気の場所。藤原さんによると、ここは湘南周辺の他のビーチに比べ、砂が細かくてランニングにも向いているそう。ビーチでの裸足ランは開放感もあり、参加者もとにかく楽しそう。陸上のトレーニングとは違った感覚を味わえるのもオススメです。

イベント情報

藤原商会では、楽しく走るをモットーに、どのようなレベルの方でも歓迎。一人で走ると妥協してしまう方や、コミュニティを求めている方など、さまざまな参加者がいるそうです。内容やコースはそのときどきで変わり、裸足でのビーチランは7〜9月頃に開催しています。その他にもさまざまなイベントを開催しているので、詳しくは藤原商会のHPやFBなどでイベント情報を確認してください。

https://www.f-shokai.com

https://www.facebook.com/F.Shokai/

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