ランニングをすると肩がこる理由と、肩こり対策・予防法について

ケア・ラントレ ランニングと故障

ランニングをしていると肩がこってしまう、という悩みを持つランナーは意外と多いものです。「体を動かすと血行が良くなるはずなのに、どうして?」と思っているランナーのみなさん。肩こりの原因を理解して、もっと快適なランニングライフを目指しましょう。

ランニングをしたあとは心地よい疲労感がありますが、意外に多いのがランニング後の「肩こり」の悩み。長い間走っていると肩がこって痛みを感じたり、走り終えてしばらくしてから痛みが現れたり。腕がしびれたりすることもあるようです。

せっかく健康のためにランニングを始めても、身体の不調を感じてしまってはもったいない! そこで今回は、ランニングによる肩こりの原因と、対策・予防方法をお伝えします。

肩こりって何?

肩こりは首から背中までの筋肉が緊張(凝り固まっている)することにより、だるさ、疲労感、重さ、痛みを感じる状態のことを指します。
筋肉が緊張している状態で、無理やり動かしてしまうことで、必要以上の負荷が筋肉にかかってしまい、痛みを引き起こしてしまいます。

それでは、何が原因で凝り固まってしまうかをご説明していきます。

肩こりの原因となるのは僧帽筋?

肩こりは原因を特定するのが難しいのですが、多くは筋肉の不調によるものが原因と言われています。
その仕組みには僧帽筋(そうぼうきん)という筋肉が大きく関わっていると言われています。僧帽筋は首から背中あたりにかけて伸びていて、肩甲骨を動かす大きな筋肉です。

長時間同じ体勢でデスクワークをすることで、筋肉に負荷がかかった状態で緊張してしまいます。それに、肩甲骨周りの動きがなくなることで、筋力が衰えてしまう可能性もあります。

その筋肉が緊張(固まってしまう)することにより、血流が悪化してしまいます。
さらに、血流が悪化する事で、酸素や栄養が行き届かなくなり、筋肉にある血管が圧縮され、痛みを感じるようにさえなってしまいます。

どうしてランニングで肩がこるの?

ランニング中に足や肩がだるくなったり、痛くなったりするのはイメージしやすいですが、どうして肩がこってしまうのでしょうか? 原因は、どうやらフォームや体幹にあるようです。

下を向いて走っていませんか?

自分のランニング中の姿勢を思い出してみてください。下を向いて、猫背気味になっていませんか? 背中が丸まっていると腕をスムーズに振れず、首や肩に負担がかかってしまいます。また、首筋が常に張った状態になるため、こりやすくなるのです。一度、自分がどんなフォームで走っているか動画を撮って確認してみるのもいいかもしれません。

張り切って腕を振りすぎていませんか?

「ランニングは腕振りが重要」と意識するあまり、必要以上に腕や肩に力が入っていませんか? 力んで肩が上がった状態で腕を振ると、肩甲骨周りの筋肉が緊張して硬くなり、肩こりが現れやすくなってしまいます。

体幹のバランスが悪い

体幹(インナーマッスル)とは広義的解釈の意味だと、「頭部と四肢を除いたの部位」と言われています。つまり「胴体(腹筋・背筋など)」と言われている部分です。

体幹の筋力低下や柔軟性がないことで、体幹の動きに制限がかかり、他の筋肉などで動きを補わなくてはいけなくなってしまいます。

体幹のバランスが崩れることにより、私たちの体は動きを制限する傾向にあります。
また、体幹の持久力がないとランニングの後半あたりになるにつれ、ランニングフォームが崩れ、肩こりが起こりやすくなってしまいます。

ランニングで起こる肩こりの予防方法

肩こりの対処法を知ること、実践することも大事ですが、そもそも肩こりが起きなかったらそんなことを考える必要はないはずです。

肩こりはランニングフォームの崩れなどが要因によって引き起こされることもあり、事前にケアをすることが大事になってきます。

ここでは、ランニングで起こる肩こりの予防方法についてお話して行きます。

まずはフォームの改善を

猫背にならないよう、頭の上に糸が伸びているようなイメージで、背筋をきちんと伸ばしましょう。それから、丹田と呼ばれるおへその下の部分をキュッと引き上げるようなイメージで、腰から姿勢を伸ばします

余計な力を入れずに、リラックスすることが大切です。

また、腕の振りは、肩甲骨を使って後ろに引くように。横方向にバタバタと振らないように気をつけましょう。

普段から正しい姿勢を意識

マラソンなどの長い距離を走りたいのに、肩の痛みが強くなり、ランニングに集中できなくなり、一度足を止めなくてはいけない状況になってしまった経験を持った方も多いのではないでしょうか。

マラソンなどの長い距離を走りたいのに、肩の痛みが強くなり、ランニングに集中できなくなってしまった経験はありませんか?

ランナーが肩こりに悩む原因として、骨盤が後傾したフォームで走り続けるということが挙げられます。

骨盤が後傾することにより、体が丸まり、首が前に出ることで猫背の姿勢になる傾向があり、筋肉が緊張して痛むということが起きてしまいます。
同じような体勢で椅子に長時間座ってたり、デスクワークなどしている方は、ランニング中でも猫背になってしまう可能性があります。

よって、普段の生活から骨盤が後傾しないような姿勢を心がけることで、肩こりの予防に繋がっていくでしょう。

ランニング中に肩こりを感じたら「両手ぶらーん」

走るときは腕を振りますが、それにばかり気がいってしまうと知らず知らずのうちに上半身に力が入ってしまいます。力みが気になってきたら、走っている間に両手をブラブラさせてみましょう。ベテランのランナーが両手をだらーんとさせているのを見たことありませんか? こうすることでほどよく肩の力が抜けます。

休憩を挟みながらランニングを行う

ランニングは両足で設置する時間は一瞬で、それ以外は片足スクワットをしている状態での蹴り出し動作を行う運動です。

反復動作においては、正しいフォームを意識して取り組む必要があります。

正しくフォームが安定しないことにより、負荷が両側均等ではなく、片側だけに過度かかり、肩こりの原因となる筋肉の張りを引き起こしてしまう可能性があります。

多くのランナーの方々はフォームを意識して走っていると思いますが、やはり後半になるにつれて疲れて、フォームが崩れてしまうと思います。フォームが維持できないと感じるようになったら、休憩を取ってみましょう。

レースだと休憩はできませんが、普段のランニングであれば、崩れた状態で走り続けるより休憩を取った方が効率的です。正しいフォームを維持して走ることを心がけることで、肩こり予防していきましょう。

日頃やランニング前後のストレッチも大切!

運動前後や日常生活の合間に、ちょっとしたストレッチを取り入れるだけでもだいぶ症状が改善されることがあります。肩や肩甲骨周りを伸ばすストレッチは、壁や椅子を活用して比較的手軽にできるものが多いので、空いた時間にストレッチしてみることをおすすめします。

椅子を使って肩甲骨周りを伸ばすストレッチ

壁を使って胸周りを伸ばすストレッチ

ランニング前後にストレッチを行う

ランニングにおける、肩こりの予防方法として手軽に行えるのは、ランニング前後のストレッチです。

ランニングは脚を使うだけでなく、体全体を動かして筋肉を使う、全身運動です。
フォームのゆがみや傾きを改善することに体幹を使い、腕を振ることに上半身、足を前に出す時に下半身を使わなくてはいけません。
ランニングで使うであろう、筋肉を伸ばしてあげることで、凝り固まって緊張することを予防することができます。

肩周辺の筋肉をストレッチしてあげることで、肩こりの予防に繋がっていくと思います。

それでは、ランニング前・後のストレッチについて紹介していきます。

ランニング前のストレッチ(ウォーミングアップ)

ランニング前のストレッチでは、心拍数をある程度上げて、体を温めることが主な目的になってくるので、ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)をするのが良いでしょう。

反動や弾みをつけて行っていくストレッチです。

皆さんも一度はやったことのあるラジオ体操や、サッカーでよく見かけるブラジル体操なども、ダイナミックストレッチに分類されます。

ランニング後のストレッチ(クールダウン)

ランニング後のストレッチでは、心拍数を下げて、体をリラックスさせることが主な目的になってくるので、スタティックストレッチ(静的ストレッチ)をするのが良いでしょう。

反動や弾みをつけずに、じっくりと伸ばしていくストレッチです。

時間は約10~30秒ほどを目安に、筋肉の伸びを感じながら行っていきます。
柔軟性アップ、可動域を広げる、筋肉痛の予防にも役立つとも言われています。

また深呼吸もしっかりと意識することで、副交感神経を刺激し、リラックスする効果もあります。

肩周りをほぐすストレッチ4選

ストレッチ1, 肩の上げ下げ

肩をすくめて落とすストレッチです。

ギュー」と息を吸いながら肩を上げて、「フーッ」と吐息を吐きながら一気に脱力して肩を落としましょう。
この動きを5回繰り返していきます。

ストレッチ2, 首倒し

前に倒す

「首の真後ろ」を伸ばすストレッチです。

正面を向いた状態から、両手を頭の後ろに添えて、首を前に押して伸ばしていきます。
痛みの出ない気持ち良いところまで伸ばしていきましょう。
この動きを5回繰り返していきます。

横に倒す

「首の真横」を伸ばすストレッチです。

正面を向いた状態から、左手を頭に添え、頭を左に倒していくことで、右の首横が伸びていきます。

反対側も同様に行います。
痛みの出ない気持ち良いところまで伸ばしていきましょう。

この動きを左右5回ずつ繰り返していきます。

斜め前に倒す

「首の後ろ」を伸ばすストレッチです。

正面を向いた状態から、左手を頭に添え、頭を左の斜め前方向に倒していくことで、右の首後ろが伸びていきます。

反対側も同様に行います。
痛みの出ない気持ち良いところまで伸ばしていきましょう。

この動きを5回繰り返していきます。

ストレッチ3, 肩甲骨の引き寄せ、引き伸ばし

「肩甲骨周り」をほぐすストレッチです。

息を吐きながら、腕を前に伸ばし体を精一杯丸め、肩甲骨をグ〜ッと伸ばしていきます。
息を吸いながら、手のひらを上に向け、両肘を後ろにグ〜ッと引いて、胸をしっかりと張ることを意識しましょう。

痛みの出ない気持ち良いところまで伸ばしていきましょう。

この動きを5回繰り返していきます。

ストレッチ4, 腕・胸伸ばし

「腕と胸」を伸ばすストレッチです。

手を後ろで結び、後方向に引き、出来るだけ腕と胸を体から離していきます。
腕・胸が痛くないところまで伸ばし、1〜2秒キープしてから戻していきます。
顔は下がらないよう、真っ直ぐかやや上を見ながらやっていきましょう。

痛みの出ない気持ち良いところまで伸ばしていきましょう。

この動きを5回繰り返していきます。

ランニングにはリラックス効果がある?

もともとランニングは肩こり解消に効果的で健康的な運動と知られています。
なぜならランニングは全身運動で、血行促進作用があり、肩こりの原因である、筋肉が凝り固まってしまうのを抑えてくれる効果を期待できるからですね。

突然ですが、皆さん「ランナーズハイ」とういう言葉の意味を知っていますか?

ランナーズハイとは継続的に走り続けることで、引き起こされる一時的な陶酔感や気分の高揚・幸福感を感じることを指します。

マラソンなどの苦しい状態が一定時間以上続くことで、脳内でそのストレス軽減するために、β-エンドルフィンという神経伝達物質が分泌されます。
β-エンドルフィンが分泌される事により、陶酔感などを感じ、身体・メンタル面でもリラックス効果が期待できると言われています。

まとめ

ランニング前後のストレッチや、日常生活の姿勢の意識などで、日常の肩こりの予防を期待できるかもしれません。

「自分にはこれが当てはまるかも」と思うような項目をピックアップして改善を試してみてはいかがでしょうか。

皆さんの肩こりが解消される事を願っています!

こちらの記事でもストレッチの方法をいくつか解説しています。ぜひ試してみてください。

すぼランナーのための「ごろ寝ストレッチ」

ずぼランナーのためのゴロ寝ストレッチ | スポリートメディア
「いま走りたくなるメディア」ランニングを中心に、読者が参加できる情報発信メディアです。スポーツの趣味を持った人が「スポリートアンバサダー」となることで企画に参加したり、寄稿ができたり、メーカーのモニターをすることができます。

プロフィール

  • 稲川 祥史

    八王子スポーツ整形外科メディカルフィットネスセンター
    日本体育協会公認アスレティックトレーナー
    修士(スポーツ科学)

    アスリートやスポーツ愛好者のスポーツライフをサポートしているアスレティックトレーナーです! 中学から大学まで陸上競技部に所属し、10000mやハーフマラソンを専門にしていました。 卒業後も北海道マラソンや福岡マラソンを完走するなど、公私共に走ることと関わる毎日を送っています。

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