ビジネスランナーズ Vol.1「とりあえずやってみよう」からウルトラランナーへ 森田浩さん(オリンパス株式会社)



会社に勤めながら走ることを趣味にしている人は数多くいます。どういったきっかけでのめりこみ、また走り続ける中でどんな楽しみや得られるものがあるのでしょうか。そうした走り続ける「ビジネスランナー」の姿から、改めてランニングの魅力を掘り下げてみたいと思います。 今回はオリンパス株式会社にお勤めの、森田浩さんにお話を伺いました。まったくの運動未経験から、いまや200kmをも越える超ウルトラマラソンを走る、ツワモノビジネスランナーです。

「マラソンをやらなあかん」 ビジネス成功にはマラソンが不可欠!?

森田さんが走り始めたのは、入社11年目に大阪に転勤したときです。取引先の大手販売店2社のバイヤーは、それぞれマラソンが趣味。

「営業として挨拶に伺うと、『うちと取引するんやったら、マラソンをやらなあかんわ』と、冗談半分に言われたのがきっかけです。それを真に受け、その日から走り始めました。でも走れたのはたったの3分。学生時代に自転車で日本一周をしたことがありますが、それ以外に運動はまったくしたことがありません。仕事のお付き合いで酒席に出ることも多く、11年の間に身体に余計な脂肪もついていました」。

しかし素直な性質なのか「やってみよう」と、森田さんはそれから平日の仕事後と、週末にも走り続けます。走ること自体は苦ではなく、そのうち走れる距離はどんどん伸びていきました。3か月もすると次第に体重が落ちて体型はスッキリ。反比例するようにタイムは向上します。そして取引先の人を驚かせる日がやってきます。

「9か月後に出場した10kmとハーフのマラソン大会で、件のバイヤーたちよりも早いタイムを出したんです。その瞬間に『ああ、楽しいな』と達成感を感じました。そのときの喜びが走り続けることにつながっていきましたね」。

マラソンの成果はビジネスに有効でした。バイヤーたちとも親しくなれ、なんと売上も3倍に。仕事でもプライベートでもWin-Winの結果に「これはいい趣味だな」と続ける以外の選択肢はありませんでした。

「やってみよう」の精神でウルトラマラソンの世界へ

初のフルマラソンに挑んだのは走り始めて4年目。タイムは3時間48分でした。しかし森田さんはスピードの追求ではなく、100kmのウルトラマラソンやもっと長いジャーニーランの世界へと入っていきます。初のウルトラマラソンのときも走れるかどうかではなく、「体験しないとわからない。とりあえずやってみよう」でエントリーするところが森田さんらしいところです。

「最初に出場したのは『サロマ湖ウルトラマラソン』(100km)です。でも70〜80kmあたりでひどく足が痛くなり、レース後1か月ほど脛が腫れ上がってしまいました。医師によると身体がまだ慣れていないせいだとか。太ももよりも太く腫れ上がって、毎日氷嚢を足に巻き付けて会社に行っていました。誰にも気づかれませんでしたけど(笑)」。

ものすごく大変そうな状況ですが、「足は腫れたけれどできちゃった」が、次の挑戦へとつながります。それに、身体的負担を上回る魅力が、ウルトラマラソンにはありました。2年後に「隠岐の島ウルトラマラソン」(100km)に出場した際、世界がひらけます。

「二度目のウルトラマラソンは足も痛くありませんでした。そのおかげで余裕ができ、島の風景を楽しみながら走れたのが良かったんです。これまで写真でしか見たことのなかった美しい風景がどんどん目の前に展開されていく。これは写真好きでこの会社に入社した私には感動的なことでした。そして島民みなさんが盛り上げてくれる大会の温かさも格別でした。私は大会の日が偶然誕生日だったんです。大会前日のウェルカムパーティーでお祝いをしていただき、記念として後から漁が解禁になったサザエも送っていただきました。こうした島民のみなさんの大会を盛り上げたい気持ちや人への心遣いが、本当に嬉しく、いいなと思いました」。

大自然や人の温かさに触れられたことで、ウルトラマラソンの世界を突き進むことになった森田さん。もちろん楽しさだけではありません。今年第1回大会だった「うつくしまふくしまジャーニーラン」(250km)は、南相馬から会津方面に行き、郡山でゴールする、福島を巡るコース。途中、被災地を走って現状を認識すると、「自分にできることは何か」と、深く考えさせられたと言います。

「私はスピード重視の走り方ではないので、ウルトラマラソンのような長い距離では、その土地の持つ魅力や住まう人の人柄をより深く感じられます。また現地の課題や現状を知ることで、何をすべきかも考えさせられます。こうした、その地でしか得られない感覚を走ることを通じて得られることが、ウルトラマラソンを走り続けていく原動力なんです」。

早く走る以外の醍醐味を発見したこと。それがウルトラマラソンでの何よりの収穫でした。

走りながら働く秘訣は計画第一

2017年は大小23大会に出場したといいます。その数にも驚きですが、仕事をしながら多くのレース出場を可能にする秘密が、常に携帯する手帳にあります。覗いてみると仕事の予定とともに、レースの日程や距離、時間などもびっしり書かれています。

「私は現在ウルトラマラソンをメインにしていますが、まず年末に次年度出場する大会を決めます。そしてメインレースの間は比較的短い距離のウルトラマラソンやトレイルランといった、トレーニング用レースで日程を埋めていくんです。あとは予定に沿ってやっていくだけ」。

長期スパンで考え、まず予定を整理。トレーニングと本番を分けるのが極意のようです。現地までの移動や宿泊など、事前の準備や予定管理も大切です。

体調面も気になります。練習は平日週に3〜4日行い、MAXでも10km。身体が疲れているときは走りません。怪我は一度だけ鵞足炎で膝の痛みに苦しんだことがありますが、「ワラーチ」と出会って走り方を矯正することができ、それも乗り越えたそう。このシューズとの出会いは衝撃で、森田さんの「マラソン人生第二の出発」といっていいほど相性がよく、今はトレーニングのみならず、ワラーチで参加するレースがあるほど愛用しています。体にあった道具を選択できるかどうかも、走り続けるには大切なことです。

「走ること=自分の生き様」の精神で楽しんでいく

ここまで23年間、走り続けている森田さん。仕事で厳しい局面に立つことになっても「超ウルトラマラソンに比べたら…」と冷静に考え、乗り切ることができると言います。取引先とも「スパルタスロンというギリシャで行われるレースに出ようと思っています」、「川の道フットレースという葛西臨海公園から、日本三大峠と言われる三国峠を越え、新潟港まで520kmを走る大会に出ました」なんて話をするととても興味を持ってくれて、営業として武器になる必須トークになっていました。

「仕事のストレスや人生におけるいろんな厳しいことを、マラソンが救ってくれました。だからやめようと思ったことは一度もないんです。そして、心が疲れているときほど走った方がいいですね。雑念がなくなり、気持ちがリセットされます」。

マラソンは森田さんにとって修行であり、仕事の武器であり、喜びであり、癒やしです。笑いながら「しんどいけれど、楽しい」という一言にすべてが集約されています。

目標は「生涯走ること」。森田さんのマラソン人生はまだまだ続きます。

プロフィール

森田 浩さん
オリンパス株式会社
コーポレートサービス本部
東京総務部 部長
1996年にランニングを始め、現在はウルトラマラソンやジャーニーランを主戦場に、年に10〜23ものレースにエントリーして走り続ける鉄人。趣味は他にサックスやジャズ鑑賞。

記事を読んで走りたくなったら「いいね!」をしよう

ビジネスランナーズ Vol.1「とりあえずやってみよう」からウルトラランナーへ 森田浩さん(オリンパス株式会社)

あわせて読みたい




ページトップへ